年の初めと言えば ” 初夢 ” ですが、古来から新年の最初に見る夢は、その年の運勢を占う特別な夢とされています。
普段、夢に関心の無い人たちも初夢だけは気になるのではないでしょうか。ある意味、年始は ” 夢 ” というものに最も注目が集まる時期です。
さて、筆者の認識では ” 初夢 ” は、初詣と同じくお正月の風物詩という受け取り方で十分だと思います。初夢が、本当に一年の計を象徴しているかと言えば、そうではないと考えます。
それが新年の最初に見たものであっても、日常に見る通常の夢とは違う ” 特別な夢 ” というわけではなく、通常の夢と同じ扱いでよいと思います。
もし、人生を左右するような ” 特別な夢 ” というのがあるのなら、それは一年の節目に限らず、あなたに必要となるタイミングに訪れるでしょう。
そもそも、常識やルールに束縛されることのない潜在意識は、現実世界の ” 暦 ” に合わせて夢を作ったりはしないのです。
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暦が夢になるとき
ただ、次のようなことは言えるかもしれません。
例えば、節分が近い時期に鬼の夢を見たり、クリスマスの数日前にサンタクロースの夢を見たりするといった場合、それは、クリスマスを意識していた結果として夢に表れたというだけで何ら不自然なことではありません。
意識していれば、それは、いつか夢になる。つまり、その人が何を意識しているかによって、作られる夢は影響を受ける。
仮に、クリスマスを祝ったことなど一度も無いという人が、今年に限って脈絡も無くサンタクロースが登場する夢を見たと言うなら、そこには何らかのメッセージがあるかもしれません。
例えば、予期せぬプレゼントが待っているとか、どうしても祝いたくもないクリスマスパーティに出席しなければならない事態になるといったような。
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さて、年末、年始になると、人は何を意識するのでしょう?
年末や年始、年が切り替わる時期は、やはり、誰にとっても一年の中で大きなイベントと言えます。例えば、年末になれば、
” ああ、早く正月休みにならないかな ”
” 振り返ってみると今年は大したことしてないな ”
” 今年は何とか乗り切れたけど来年はどうだろうか? ”
など、様々な思いが人それぞれの中に出てくる時期でもあります。その思いは、その人の心の中で夢として形になる。
早く休みを取りたい人は、待ち望んだ日暮れの夢を見るでしょうし、今年の出来高に不満な人は太陽が沈まない夢を見るかもしれません。沈まなければ今年は続く。
また、来年を心配する人は、詐欺にあって大金を騙し取られる夢を見るかもしれない。
それは、今年、積み上げてきたものを失ってしまうのでは、という心配する気持ちが単に映像化されているだけなのです。
もちろん、これらは単なる一つの例であって、あなたが日暮れの夢を見たからといって同じ解釈になるとは限らない。また、夢占いを調べたところで上に挙げたような解釈は載っていません。
先ほども言ったとおり、潜在意識に常識やルールは通用しないのです。無論、既存の解釈に合わせて夢を作ったりもしない。
リフレッシュ願望
では、年始めに、人はどんなことを思うのでしょう?
” 去年はダメだったけど、今年こそ頑張りたい ”
” ああ、今年も厳しい年になるのかな? ”
” 今年は勝負の年だ ”
” いい初夢が見られたらいいな ”
新年を迎えるからこそ、心機一転の思いを込めたり、人生の目標を改めたり、幸せな一年を願ったり。こういった切なる思いは、やはり夢に影響を与える。
その夢は、それを見る人に合わせて様々なストーリーとして描かれるでしょう。
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次は、とある男性が見た初夢の一例です。
家の外壁が錆び付いている。
業者に電話をして、張替え工事の見積もりについて話をしている。
男性の話では、家の外壁が汚れているわけでもなく、今後、外壁工事を予定しているわけでもなく、なぜか、この夢を見たということでした。
このケースでは、夢の中の外壁の錆は、彼自身の ” 心や体の錆 ” を表していると解釈することが出来ます。
彼自身、年末の時期に仕事に忙殺されて、リフレッシュしようにもなかなか出来なかったという事情から、メンテナンスが必要な自身の心と体を外壁工事に置き換えて補修しようとしているのです。
また、自宅の外壁工事という大掛かりな設定として描いているのは、日常的なメンテというよりは、新年に向けて気持ちを一新したいという彼の意識の表れなのかもしれません。
良い年なのか、悪い年なのか?
次は、とある女性が見た初夢の一例。
朝日が昇るのを窓から眺めている。
しばらくすると、太陽はなぜか沈み始め夕方になる。
それから地平線の間を出たり引っ込んだり繰り返している。
何とも奇妙な夢です。
女性は夢占いで ” 日の出の夢 ” と ” 日が沈む夢 ” の両方を調べてみたが、結局、どう解釈してよいか分からずに筆者を尋ねたということでした。
夢占いでは、日が昇る夢は概ね吉夢とされ、夕暮れの夢は運気低迷を指します。
「これは、どう解釈すれば・・・今年は良い年なんでしょうか? それとも悪い年ですか?」
最初、筆者にも、それが何を意味するのか分かりませんでしたが、女性の置かれた現在の状況を聞いているうちに、太陽の奇妙な動きに意味があることに気がつきました。
彼女は昨年、体調を崩し、心配になり病院で診てもらうと、医師から自律神経のバランスが崩れていると言われたそうです。
それから、しばらく仕事にも行けなくなり、外出することすら、ままならなくなっていた。
半年ほど経って、徐々に回復していったが、まだ完全ではないという状態で年末を迎えた。
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「夢の中で窓の外を眺めていたのは、朝日を拝むためですか?」
筆者の質問に彼女は答えます。
「いえ、外出しようかどうか迷っていたんです。外が明るくなったら出てみようと・・」
「今は、外出されることはあるのでしょうか?」
「ええ、仕事にはどうにか復帰しましたが、出勤日数を制限している感じです。また体の不調が始まると思うと不安で以前のように元気に働くことが出来なくて・・」
「でも、本当は以前のように働きたい」
「はい。このままじゃいけないと思いながらもなかなか、ふっ切れなくて・・」
この夢における太陽は、彼女の中の ” 勇気 ” を表しています。それが地平線の彼方で出たり、引っ込んだりしている。
多分、新しい年を迎えた彼女は、その節目に気持ちを切り替え、新たな生活を歩み直そうとしているのでしょう。
朝日という ” 勇気 ” が彼女の背中を押す反面、” 不安 ” が太陽を沈め、彼女の足を引っ張る。
「結果的に太陽は、どうなったんですか?」
筆者は尋ねます。
「出た状態で目が覚めました」
「それならば、あなたの中の勇気が不安に打ち勝ったと解釈することもできそうですね」
「ということは、今年は良い年ということですか?」
「あなたがそう決めたのなら・・夢の中では、もう決めているように見えますが」
バイオリズム
年初めには ” 新しい気持ちで年を迎えたい ” というリフレッシュを願う気持ちが、新しいものを買う夢や古いものを処分する夢として表れることがある。
いずれにせよ、一年の節目を迎えるに当たり、一人一人が何を振り返り、何を感じるのか、それぞれの思いに応じて夢は作られるのです。
もし、あなたが見た初夢が悪夢であったとしても、それが新しい一年の運気低迷を予兆しているわけではありません。
通常、夢は日常的な事柄をテーマにします。一年の全体運を総括する夢が作られることはなく、潜在意識は、ただ、今作りたい夢をそのときに作るだけです。
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それが、初夢であっても、日常的な夢であっても同じ価値を持ちます。
初夢だけでなく、その次の日も、明後日も、潜在意識は夢という形であなたにメッセージを送り続ける。
メッセージには重要なものもあれば、日常のちょっとした気がかりに関することもあります。しかし、そのどれもが、その時のあなたにとって必要なメッセージなのです。
初夢が、パッとしないありきたりな夢であったとしても、価値が無いわけではありません。どんな夢にも意味はある。
” 心の声 ” を聞く機会は、別にお正月だけに限られたものではありません。それは365日、毎日ある。
年初めに今年の運勢が悪いからと言って、行動すべき時に行動を起こさず一年を棒に振るとしたら、それは、とても勿体ないことですよね。
バイオリズムや運気の流れという考え方もあるとは思いますが、筆者は運勢のグラフを眺めて判断するよりは、今の自分自身について振り返って、よく理解することの方が重要だと考えます。
先を急ぎ過ぎて結果ばかりを求めていないか、感情的になって大事なことを見落としていないか、疲れが蓄積して体が悲鳴を上げているのに、その声を無視していないか、また、チャレンジすることに何かと理由をつけては躊躇っていないか・・
そういった自己観察に日頃から務めている人は、バイオリズムを知らず知らずに体得しているものです。大きな気の流れとは日々の細かな調整とメンテナンスの結果であり、未知の力が働いた結果ではありません。
大切なのは、今日一日をどう過ごすかです。結局、一年とは、一日の連続に過ぎないのですから。
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