犬は人間にとって、とても身近な存在です。
ゆえに夢に登場する頻度は、
他の動物よりも多いかもしれません。
そして、猫と同じく夢占いの解釈が
幅広いことも特徴の一つです。
それは、幸運の知らせだったり、
悪い出来事の警告メッセージだったり。
ただ、気をつけたいのは、あまり、
犬が登場した意味を固定的に捉えては
いけないということです。
夢は潜在意識が作り出すもの。
それが、既存の解釈に従って作られる
とは限りません。
夢は、そもそも自由な創造力によって
生み出された作品。解釈する側にも
囚われない創造力は必要なのです。
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吠えかかる犬
次は、とある男性が見た夢の一例です。
路上で一匹の野良犬が、
意中の女性に吠えかかっている。
自分は暴れ回る犬の首に腕を回し、
必死で押さえ込む。
” 待て! ” と何度も叫んでいる。
野良犬が好きな女性に吠えかかる
という比較的シンプルな構成の夢です。
この夢における ” 犬 ” は、彼の一つの
側面を切り取って表現された存在です。
好きな女性に対する彼の中の ” 衝動 ”
が犬として登場している。
夢の中では、その ” 犬 ” は、
好きな人に噛みつこうとしていた。
一見すると、好意を持っている相手に
攻撃的な態度を取るというのは
矛盾しているようにも見えますが、
彼が恋愛に消極的な人柄であることを
知ることでその心理を理解できます。
つまり、女性の存在が、彼が自身の
コンプレックスと向き合わなければ
ならないきっかけとなっている。
女性が現れなければ、
考える必要は無かったのです。
自分の容姿について。
それは、彼の人生において、
さして重要な問題ではなかったが、
それがハンデになりうることを
自覚しなければならなくなった。
” お前のせいだ
嫌なことを思い出したのは ”
この夢に登場している意中の女性は、
女性そのものというより、彼の中に
投げかけられた問題意識の象徴です。
*
夢の中では、自身から衝動的な
苛立ちを切り離し、節度の通じない
動物に置きかえて、意中の女性に
けしかけている。
その一方で彼自身が、それを必死で
抑え込もうとしている。暴走気味の
怒りの衝動を彼自らセーブしようと
しています。
夢の中では、その野良犬は、なぜか
自分が世話をしているという認識が
あったそうです。
そして、犬が女性に吠え続けることに
恥ずかしさを感じ、抑え込みながらも
女性に顔を向けることが出来なかった。
ペットではなく、あくまで野良犬という
設定は、無論、彼自身によるものです。
” 野良犬 ” つまり、その存在は、
彼にとって他人事でなければならないのです。
なぜなら、それは、
” 自身の認めたくない一面 ” だから。
しかし、設定がどうであれ、結局は、
それが自身に関する問題であることを
自覚しているために、野良犬でありながら
自分が世話をしているという曖昧な認識を
生み出している。
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ドッグウォーカー
では、もう一つ、犬に関する夢の一例。
次は、とある女性が見た夢です。
複数の犬を散歩させている。
それぞれ違う種類の犬。
皆がバラバラの方向に行こうとして、
全く家に辿り着くことが出来ない。
飼い主に代わって犬を散歩させる
” ドッグウォーカー ” という職業が
ありますが、彼女は夢の中でまさに
それだったと言います。
” あなた自身はそういったお仕事を
された経験はありますか? ”
” いいえ、
テレビで見たことがあるぐらいです ”
” 犬は好きですか? ”
” 好きです。ただ・・今は飼うことが
出来ないんです。アパート暮らしなので ”
” では、犬と触れ合う機会というのは、
日常生活には無い? ”
” そうですね。
YouTubeで動画を見るぐらいしか・・ ”
さて、この夢は、
一体、何を意味しているのでしょう?
最初に筆者が夢の内容から推察したのは、
この夢は仕事に関すること、例えば、
犬は職場の部下を表し、彼女は管理職
のような立場で、部下がコントロール
出来ていない状況を夢に描いている
のではと思いました。
そこで、仕事に関するいくつかの質問を
しましたが、彼女は、自分は管理職
でもなく、部下と言える社員もいないと
言います。
筆者は、もう少し、彼女の内面について
深く知る必要があると感じました。
*
それから、セッションを続ける中で
彼女という人柄、置かれた立場が段々と
見えてきたのです。
彼女の仕事は、事務職で、大抵は、
社員が出払ったオフィスで一人ぼっちで
仕事をしているということでした。
その会社に就職して、待遇や職場環境
について取り立てて不満は無かったが、
三年以上同じオフィスで同じ状況で
話し相手も無く働き続けていることに
少しだけ嫌気が差していると。
最近になって、自分には他の人生の
選択肢もあるのかもしれないと、
考えるようになったと言います。
*
この夢に登場する色々な種類の犬たちは、
彼女の中の ” 可能性 ” を表しています。
それぞれが自分の行きたい方向に
向かって歩こうとしている。それが
彼女をあっちやこっちに引っ張り回している。
しかし、夢の中で
彼女自身は、自宅に戻ろうとしています。
この場合の ” 自宅 ” は彼女の住み慣れた
” 今まで生きてきた人生 ” を表しています。
彼女の中でこれまでの人生を続けるか、
新しいことにチャレンジするのか、
心の葛藤が描かれている。
犬たちの向かう方向がバラバラなのは、
彼女自身が新しい生き方を模索しながらも
何をすべきなのか定まっていない状態を
表しています。
将来のためのメッセージ
さて、あなたの夢に犬が登場したとして、
その意味を知るためには、まず、
あなた自身が今、どんな状況なのか
ということを一度、振り返ってみても
よいかもしれません。
そして、自分の中にどんな思いがあり、
どういった悩みを抱えているかを
客観的に観察するのです。
夢の中に特定の動物が登場する場合、
象徴的な意味合いを持った存在として
扱われることがあります。
ただ、その動物が何を象徴するかは、
ケースバイケース。犬ならばこれを象徴し、
猫ならばこう解釈するといった決まった
ルールは無いのです。
あなたの夢におけるルールメーカーは、
あなたの潜在意識です。
そして、潜在意識とはあなた自身。
*
今回紹介した二つの夢は、夢占いのように
未来への暗示という予知的要素は含まれて
いませんが、必ずしも、それが将来に
無関係だということではありません。
ドッグウォーカーの夢を見た彼女は、
セッションが終わりに、次のように言います。
” 今の仕事は、お給料もいいし、気楽で幸せ
なのかもしれないけど、本当は好きなことを
仕事にしたい ”
彼女は、ドッグウォーカーという職業を
テレビで知り、好きなことを仕事にしている
人の笑顔がとても充実しているように見えた
と言います。
今回の夢でこの設定を選んだのも、
それが理由だったのかもしれません。
そして、最後にこう付け加えた。
” 自分のこれからを
もっと真面目に考えなければと思った ”
まさに、この言葉が潜在意識が夢を通して、
彼女に気づいて欲しかったことではないでしょうか。
全ての夢は、将来のために作られる。
過ぎ去った過去から
生まれる副産物ではないのです。
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