インスピレーションが夢になる時|それは暗示か?

霊感。インスピレーションとも呼びますが、
よほど妙な胸騒ぎがあるといったことでも
無い限りは、日常生活では、それほど意識
することはないでしょう。

もしかしたら、日頃から、そういった
感覚をお持ちの方もいるかもしれませんが、
普通は、筆者と同じく第六感のようなものを
感じとる能力はありません。

あったとしても ” 何となくそんな気がする ”
といった程度のぼんやりとした感覚です。

ただ、なぜか、睡眠中、夢を見る時にだけ、
感覚が研ぎ澄まされるのか、未来の出来事
にアクセスすることがある。

それが私たち一般人であっても・・

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葛藤する二つの心理

次は、とある女性の見た夢の一例です。

目覚めると時計の針が午後3時を
指している。完全に寝過ごした。
 
車で友人との待ち合わせ場所に
向かっている。
 
信号機がなかなか青にならない。

誰もが一度は見たことのある遅刻して
しまう夢です。

一般的によく見られる会社に遅刻する夢は、
会社に行きたくないという気持ちと、
会社に行かなければならないという
強迫観念の狭間で描かれることが多い。

強迫観念は、一種の願望です。

なので、大抵は、夢の中で遅刻に
気づくのは、諦めようか、今から向かうか
というギリギリのタイミングです。

そして、焦って向かってはいるが、絶対に
会社に到着することがない。到着すれば、
会社に行きたくないという願望を満たす
ことが出来ません。

とは言え、行くのを諦めてしまえば、
会社に行かなければいけないという
強迫観念を放棄してしまうことになる。

双方のバランスを取って妥協案として、
” 会社に行く途中 ” を延々と描くわけです。

途中ならば、会社に行く必要も
ありませんし、一応、会社に行く努力は
しているということで強迫観念に答える
ことも出来る。

さて、この夢の場合は、会社ではなく、
友人との待ち合わせに遅刻してしまう
という設定です。

ならば、この夢も会社に遅刻する夢と
同じく、行きたくない気持ちと強迫観念の
狭間を描いているということでしょうか?

もし、行きたくない心理と読むならば、
友人に会いたくない理由があるはずです。

筆者は、まず、この夢を見た女性に
友人についていくつかの質問をしました。

” ご友人とのご関係は良好ですか? ”

” ええ、何も問題ありません。
良好だと思います ”

” 最近、喧嘩をされたといったことは? ”

” 無いです。
話していて普通に楽しいです ”

彼女の話を聞く限り、友人との関係に
取り立てて、会いたくない理由などは
見当たらなかった。

夢の内容を振り返ってみましょう。

夢の中で彼女は、なかなか青にならない
信号機が故障しているのではないかと
疑った。

しかし、自分の前に一台の車が停車
しており、背後にも車があったため
身動きが取れなかった。

明らかに彼女の潜在意識は、目的地に
到着できないシチュエーションを
意図的に作り込んでいます。

このことからも、この夢は友人と会いたく
ないという気持ちを描いた願望夢であると
読むことが出来る。

ただ、先ほども言った通り、その時の
彼女には会いたくない理由など無かった。

これについては、どう考えるべきでしょう?

伏せられた事実

” ところで待ち合わせの場所、つまり、
あなたが向かっていた先はどこでしたか? ”

筆者が訪ねると、
彼女は次のように答えます。

” 確か、駅に向かっていたと思います ”

” つまり、ご友人とあなたは駅から遠くへ
行くという設定だった。
旅ということでしょうか? ”

” 旅なのか・・良く分かりませんが、
あまり、楽しい気分ではなかったと
思います。それに二人ではなく、一人です ”

” 行くのは、あなただけ? ”

” ええ、友人は私を見送るために駅で
待っているという設定だったと思います。
それで、わざわざ見送りに来ているのに
本人が遅れるなんてありえないと思って、
焦って車を走らせていました ”

ここまでの話をまとめると、彼女自身は
夢の中で急いではいるが、それは友人に
迷惑をかけてしまっているという
” 責任感による焦り ” ということになります。

なぜ、彼女の潜在意識は、
このような設定を選択したのか?

駅に友人を配置したのは彼女自身です。

友人という存在がなければ、彼女は
スケジュール遅らせることも出来る
でしょう。もしくは、
旅自体をやめてしまうことも出来た。

つまり、友人の存在が、彼女に駅に
向かわなければならないという動機を
与えている。

駅に向かいたくない心理、
そして、駅に行かなければいけない心理、
その狭間でこの夢は作られている。

ただ、彼女を急がせている本当の理由は、
友人が待っているからではありません。
それは、夢の中の設定であって表面的な
口実です。

彼女の中に、何か葛藤があるのかも
しれない。筆者は質問を続けます。

” 最近、気が進まないが、やっておかな
ければならない事に何か心当たりは? ”

” やっておかなければ・・?
特にそういった用事は無いと思いますが・・
仕事の話なんでしょうか? ”

” 何か思い当たることでも? ”

” 最近、資格について調べたりして
いるんですが、どれも私にはレベルが
高くて・・ ”

” スキルアップについて考えている? ”

” ええ、一週間ほど前でしょうか、
同じ部署で働いている人に言われまして・・ ”

” 何を? ”

” 頑張れ、君は自分をちゃんと
評価出来てない・・と ”

” その方は、夢に出て来たご友人とは、
別の人物ですよね? ”

” いえ・・同じ人物です・・ ”

曖昧な関係

彼女の話では、同じ職場で働く男性に
言われ、スキルアップについて考え始めた
と言います。

そして、彼女は、
その男性が、少し気になっていた。

筆者に夢の内容を伝える段階で ” 友人 ”
という表現をしたのは、自分自身では
それが明確な恋愛感情だと分からなかった
からだと言います。

職場で出会い、同僚、そして、友達として
交流していく中で徐々に彼女の気持が
変化していった。

つまり、この夢は恋愛対象として
好意を寄せている人物に会いに行くために
急いでいるというストーリーなのです。

しかし、彼女は夢の中でその人物と
会うことに消極的姿勢を示しており、
必ずしも楽しい気分ではなかったと。

この夢は ” 別れ ” を描いているのです。

彼女が駅に着くことを拒むのは、
別れなければならない現実を受け止め
たくないという心理から。

しかし、その一方で別れるならば、
” さよなら ” を伝えたい気持ちが彼女を
駅に向かわせている。

彼女の中の焦りは、その時期が迫っている
ことを直感的に感じ取ったからなのかも
しれません。

この解釈を彼女に話すと、次のように
言いました。

” ちょっと心配ですが・・夢で私が遠くに
行く設定になってるということは、
私にその予定が無ければ大丈夫ですよね?”

” ご予定は無いんですね? ”

” はい、今のところは。ただ、人生何が
起こるか分からないですから、しばらくは
様子を見ておこうと思います ”

それから、二週間ほど経った頃、
彼女から連絡が届きます。

男性が、会社を辞めたということでした。

その知らせを聞いたのは彼自身から
ではなく、同じ職場で働く別の社員から
ということで、彼女には一切連絡は無かった。

その時、自分が彼にとって
” ただの職場の同僚 ” に過ぎなかった
ということに気づいたと言います。

夢の中では、彼女が列車に乗るという
設定になっていましたが、実際には
列車に乗ったのは彼の方だった。

彼女は ” 見送る側 ” だったのです。

しかも、ちゃんとしたお別れも
出来ないまま。

” 単なる知り合い ” でしかなかったという
事実が彼との距離を感じさせ、その後、
連絡を取っていないと言います。

この夢における ” 旅 ” は、地理的な意味
での距離ではなく ” よそよそしさ ” という
精神的な距離感を表していたのかも
しれません。

では、なぜ、彼女の潜在意識は、列車に
乗る側と見送る側を入れ替えているの
でしょう?

それは、例え二人の距離が離れてしまった
としても、彼女に戻る意思があれば、
それが可能だからです。しかし、彼が列車に
乗ってしまえば、戻ってくる可能性は無い。

潜在意識は彼女を安心させるために
より負担の軽い ” 別れ ” に置き換えた。

” 二人の距離は開いてしまうけど
心配しないで。列車に乗るのは彼でなく、
あなただから ”

彼女は言います。

” さよならが言えなくなってから、
本当は好きだったと気づくなんて
バカみたいですよね、私 ”

ただ、筆者には、一つ引っ掛かっていた
ことがありました。

” 確か、彼が、あなたに自己評価の話を
されたのは、夢を見た一週間ほど前
でしたよね? ”

” ええ、そうですが・・ ”

” それは、仕事の会話の途中で、
そういった話になったということですか? ”

” どうだったかな・・・
何だか脈絡もなく呟いたと言いますか・・
私も唐突に言われたので、その時は、
何を言っているのか分からなかったんです。
あれは・・・ ”

彼女は、気づいたようでした。

彼は職場の中で誰よりも最初に、
彼女に別れの言葉を伝えていたのです。

” じゃあ、彼が言った自分を評価
出来てないというのは・・ ”

” それは、仕事について言われたのですか? ”

インスピレーションはどこから?

今回の夢は、未来の出来事をきっかけに
作られているようにも見えます。ただ、
彼女は一連の出来事を回想して、
次のような言葉を残しています。

” どこかに行ってしまうかもしれない
という不安は常にあった ”

確かな根拠は無いが、どことなく
そんな気がしていたという彼女の直感は、
今回、当たってしまったわけですが、
無論、この夢は、彼女の ” そんな気がした ”
という感覚によって作られたものです。

これを ” 予知 ” と考えるかどうか、
確証を欲しがる人もいるかもしれませんが、
筆者は、どちらでもよいと考えます。

彼女が一つの夢を見て、一つの出来事が
あった。それが関連し合っているようにも
見えた。

ただ、それだけです。

この状況に、正解など無いのです。

実際、夢を観察していると、会社に遅刻
する夢のように願望を軸に作られた夢
以外にも、そのインスピレーションが
どこからやってきたのか出生不明のものが
見つかることがあります。

それが夢が支離滅裂に見える一つの要因
にもなっているのですが、ただ、純粋な
願望夢であっても複雑な構成のストーリー
もあるため、一概に未来の暗示に
結び付けることも出来ない。

まずは、その内容がどういったものであれ、
願望夢という前提で解釈を始める方が
よいでしょう。
暗示を疑うのは、その線だけでは、
どうしても辻褄が合わなかった時です。

そして、解釈出来なかった夢は、
日を改めてやり直すといった作業が必要に
なるかもしれません。

夢解釈とは、たった一度の思索のみで
全てを解き明かせるほど単純では
ありません。それが短い夢でもない限りは。

本来は、油絵のように何度も塗り直し
ながら、最も美しい構図を探り当てていく
作業に似ているのです。

 

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