就寝前の小さなエピソード|秘密の空間

行きつけのお店とか、隠れ家といった
プライベート空間。

筆者は、そういった場所を自ら進んで
作ろうとは思わないのです。通常は。

自宅だけが唯一のプライベート空間です。

と言っても、インドア派の筆者にも、
捻り出せば、二、三、思い当たる場所
というのがあります。

まだ、誰にも教えていない。

というより、教えるほどの場所ではない
と言った方が正しいのかもしれませんが・・

今回は、” 場所 ” に関するエピソードを
いくつか紹介しましょう。

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秘密のスポット

丁度、大きな仕事が一段落した時期でした。

その時期、時間さえあればブログを
書いたので、本当の意味での ” 休日 ” と
言える日は無かった。

仕事にメリハリをつけるといいと、
よく聞きますが、筆者はそれが出来ない
タイプでした。

ただ、その時は、
なぜか、海を見たくなったのです。
もう何年も行っていませんでした。

季節的には、春の終わり、初夏の少し前
というところで、早朝に行けば誰もいない
だろうと思い、朝の6時頃に自宅を出発
しました。

海と言えば海水浴場。

トイレもありますし、自動販売機も
ありますし、朝食を取ることも出来る
のですが、筆者は、そこではなく、
一箇所だけ知っている秘密のスポットを
目指していました。

そこは、トイレも無い松林の先にある
小さな砂浜で、殆ど人の来ない場所です。

以前、その一帯で道に迷ってしまい、
車でグルグル回っているうちに、
その砂丘を見つけたのです。

秘密のスポットに到着すると、案の定、
誰もいません。

筆者は、砂の上に腰を下ろして、
繰り返し寄せる波を眺めながら、
コンビニで買っておいたサンドイッチを
黙々と食べました。

その後は、することもなく、波打ち際を
散歩したり、拾った小石を海に投げたり
していました。

ただ、それだけなんですが。

何の目的も無く、無意味な時間が
流れていく。

数匹のカモメが、海の上で風に煽られ
ながら同じ場所を飛んでいる。

砂の上の足跡は押し寄せる波によって、
消え去っていく。

誰も、砂丘を歩く自分の姿を見ていない。

筆者が忘れてしまえば、海に行った
という事実は消え去るのです。

ただ、なぜか、時間が勿体ないとは
感じない。

多分、また、いつか
ここに来ることになるでしょう。

この感覚を忘れた頃に。

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隠れた名店

子供の頃、時々連れて行ってもらった
小さなラーメン屋がありました。

古びたのれんをくぐって、ガラガラと
手動の引き戸を開けると、店の主人が
しゃがれた小声で ” いらっしゃい ” と
声をかける。

カウンター席が六席ほどあり、座敷に
小さなテーブル席が一つあるだけの
こじんまりした内装です。

そして、店内の高いところに小さな
ブラウン管テレビがついていた。

壁は調理油によるものなのか分かり
ませんが、少し黄ばんでいて、
この店が長年営まれてきたことが、
子供の私にも容易に想像出来ました。

カウンターも、テーブルも、椅子も
何もかもが、昭和の時代で止まっている。

そして、いつも必ずテーブル席に
座ることが出来ました。決して、
繁盛しているとは言えなかった。

今、考えてみると立地条件も悪かった。

車を止める駐車場も無く、歩いて行くか、
近くの砂利道にこっそりと路上駐車して
行くしかなかった。

とても、恋人に ” 行きつけの隠れた名店 ”
などと言って、紹介出来るような店では
ありませんでした。

ただ、味は、絶品だった。

人によって好みは分かれると思いますが、
筆者にとっては、これこそがラーメン
というような、こってりとしたスープが
最高でした。

それから、いつもの餃子とチャーハンと、

決して綺麗とは言えない年季の入った
厨房で、白髪のご主人が湯気の中で、
無言で大鍋をかき回している姿が今でも
思い浮びます。

もう、大人になってから一度も、
行かなくなってしまった。

あの店は、まだ、やっているのだろうか?

秘密基地願望

女性には、あまり、ピンと来ないのかも
しれませんが、男性には ” 秘密基地願望 ”
というのがあります。

筆者が勝手にそう思っているだけなのかも
しれませんが・・

岩場にちょっとした洞窟っぽいものが
あったり、雨風を凌ぐちょっとした
スペースがあれば、それを見つけた少年
たちに ” 秘密基地 ” と命名されるのです。

いわゆる ” 男の隠れ家 ” という発想も、
この秘密基地願望からの系譜だと思います。

都心に住む現代の子供たちには、
そういった場所を見つけるのは難しい
かもしれません。

治安とか、防犯という視点で考えると、
そういう場所は地域に少なくなっている
のだと思います。

*

さて、少年たちは秘密基地で
何をするのか?

することなどありません。

ちょっと集まって雑談する程度です。

そもそも暗くて狭い場所ですから、
長時間滞在出来るようなところでは
ありません。

ただ、欲しかっただけ。

学校でもなく、親の待っている家でもなく、
” 自分たちだけの場所 ” というのを。

そして、いつの間にか誰も来なく
なってしまう。

” 秘密基地 “という子供じみた遊びに
興味を示さなくり、皆、大人になっていく。

ゲームとか、ガールフレンドとか、
塾とか、より充実した人生へとシフト
していく。

少しばかりの思い出と虚しさ、わずかな
痕跡だけを残して、” 秘密基地 ” は、
忘れ去られていく。

何だか、寂しい気もしますが・・

 

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