夢は、なぜ支離滅裂なのか?|置き換えられた “A” と “B”

なぜ、夢は支離滅裂なのでしょう?

もちろん、偶然の産物だから、
ではありません。

実際、どんな夢にもメッセージ性がある。
それは、全てが意図的に仕組まれた結果、
支離滅裂に見えるというだけです。

夢が難解に思える理由の一つは、
潜在意識が夢を作る過程で使う技法に
よるものです。

今回は、夢の具体例を挙げながら、
技法の一つである ” 置き換え ” について
解説していきましょう。

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初歩的な ” 置き換え “

目覚まし時計のアラームが夢の中で
携帯電話の着信音や玄関のチャイムとして
表現されることがあります。

あまりにうるさい音に目覚めると、
時計のアラームが鳴り響いている。

目覚まし時計を使うほとんどの人が、
こうした体験をしたことがあるでしょう。

次は、夢の一例です。

兄の携帯の着信音が鳴っている。
また、携帯を忘れて出かけたらしい。
 
私は着信音を無視して眠り続ける。

この夢を見た女性は、自分の枕元で
鳴り続ける目覚まし時計のアラームを
夢の中で兄の携帯電話の着信音にすり替え、
眠り続けようとしています。

鳴っているのが目覚まし時計ならば
起きなければならない。

眠り続けたい彼女はベルの音を着信音、
さらには自分とは関係のない兄の携帯に
置き換えることで、自分が起きなくても
よい状況を夢にしています。

このように、夢は都合の悪い事実を都合
の良いものに置き換えて、睡眠を妨げる
要因を排除しようとする性質があります。

この夢では、置き換えの対象が、時計の
アラームと携帯の着信音という単純な
ものですが、それ以外にも様々な形が
存在します。

例えば、夢占いでは象徴として様々な
動物が登場しますが、これも一種の
” 置き換え ” です。

例えば、夢占いではカラスは災いの象徴
という解釈がありますが、” 災い ” を
” カラス ” に置き換える理由は、仮に
あなたに降りかかるものが災いでなく、
カラスならば、追い払えば解決する存在
だからです。

しかし、それが人間関係のトラブルや事故
ということなら、そう簡単に解決できない
でしょう。

潜在意識は将来訪れるかもしれない
” 災い ” を ” カラス ” に置き換えることで、
あなたへ降りかかるダメージを軽減しよう
としている。

この場合、” 災い ” と ” カラス ” の
ダメージの大きさがどれぐらい違うのか
というギャップの問題があります。

” 災い ” が命に関わるレベルだった場合、
それを ” カラス ” に置き換えることに
ちょっと無理がある。

要するにダメージを軽減し過ぎて、夢に
リアリティが無くなり、ストーリーが
破綻した状態です。この状態になると、
夢を見ている本人は、その違和感に気づく
ことになります。

” 何か変だ。これはカラスじゃない。
嫌な予感がする! ”

本人に気づかれた時点で潜在意識は、
目的を果たすことが出来ず、睡眠の阻害
要因排除に失敗するわけです。

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より巧妙に

では、都合の悪い事実が目覚まし時計の
ベルといった単純なものではなく、
心の問題といった複雑なものだった場合は
どうでしょう?

例えば、誰かに対する嫉妬、自己嫌悪、
羞恥心など、自分では認めたくない感情、
心の中にしまっておきたい事実。

夢はさらに巧妙に、この ” 置き替え ” の
技法を使って組み立てられていきます。
そして、一見、何を意味しているのか
分からない支離滅裂な夢になる。

それは、不都合な部分を隠蔽するために、
あえて難解にしているのです。

夢の支離滅裂なストーリーは、単に記憶の
断片が寄せ集められた偶然の産物ではなく、
理由ある ” 脚色 ” です。

では、心の問題が夢になる具体的な
ケースを見ていきましょう。次は、
とある既婚の男性が見た夢の一例です。

車内で運転席に座っている。
 
後部座席で妻と義理の父が雑談を
している。帰りは誰が運転するのか
という話になり、二人は口論になる。
 
それをバックミラーで眺めている自分。

何となく日常的な夢のようにも見えますが、
彼がこの夢を見た経緯があります。

彼は、妻に相談も無しに新車を購入し、
その事で妻との関係が悪くなってしまった。
妻は新車購入の事実を知ったその日から、
だんまりを決め込んでしまい、夫婦で
話し合うことも出来ない状態だと言います。

つまり、この夢は新車の一件によって、
こじれてしまった夫婦関係を描いている
わけです。

そして、この夢には、いくつかの
” 置き替え ” が行われている。

まず、” 新車のことで ” 揉めているという
事実を ” 新車の中で ” 揉めているという形
に変更しています。

そして、新車購入のためにローンを
背負ってしまったという後々の責任を
帰り道は誰が運転するのかという責任に
置き換えている。

後部座席で言い争う二人も、無論、
彼による脚色。本来は夫婦が口論すべき
ことを父と娘の口喧嘩に置き換えて、
自分はバックミラー越しに眺める婿という、
あえて自分を蚊帳の外に置き、問題から
距離を取ろうとしています。

義理の父は、彼の代弁者。

つまり、沈黙を貫く妻との話し合いを
夢の中で実現させているわけです。
自分の代わりに義理の父に反論してもらう
ことで、自らが非難の矢面に立つことを
回避することが出来る。

この夢は、妻に不都合な事実を責められる
ことを恐れながらも、言い訳をしたいという
彼の心理が描かれています。

今回は、シチュエーションを都合良く
書き換えるために、少なくとも三つの
置き替えが組み込まれている。

これは、まだ、シンプルな例ですが、
実際は、より複雑な形でストーリーが
構成されていきます。

” A ” と ” B “

例えば、あなたが何か夢を見たとして、
それを解釈する場合、潜在意識が
裏で何をしているのかを理解する必要が
あります。

一見すると、何となく日常風景を描いて
いるように見せかけていますが、そこには、
潜在意識の様々な技巧が目立たない形で
施されている。

そこで、よく使われる技法の一つが、
今回紹介した ” 置き換え ” です。
夢の中で ” A ” が ” B ” に置き変わっている
という状況。

ここで一つ、注目すべき点。

先ほど例にあげた車内を舞台にした夢は、
まさに、問題の原因となった新車の中で
ストーリーが展開しています。

つまり、完全な置き換えがされていない。

それが不都合だというなら、全く違う
シチュエーションで夢を作ることも可能です。

夫婦間の面倒な揉め事をわざわざ夢にして、
嫌な気分になるぐらいなら、新車など
使わずに趣味を一人楽しんでいる夢でも
作ればいい。しかし、潜在意識は、あえて
それをしなかった。なぜか?

置き換えが行われる理由は、頭を悩ます
問題をイリュージョンによって疑似的に
解決することです。現実から逃避する
ことが目的ではありません。

だから、夢を見ている本人に錯覚を
与えるために ” A ” と ” B ” は、ある程度、
類似していなければならない。

” A ” と ” B ” の類似は、シチュエーション
の類似であったり、外観の類似であったり、
” 炎 ” と ” 怒り ” といった抽象的イメージ
の類似であったり、状況に応じて使い分け
られます。いずれにせよ、

” 何か違う気もするけど・・
俺は、何について悩んでいたんだっけ? ”

という程度の誤認識を与え、本人に演出
の意図に気づかれさえしなければ、
潜在意識としては、それでよいのです。

” 大丈夫、後ろで二人が喧嘩してるけど、
あんたには関係ないから ”

さて、今回は、夢が支離滅裂に見える
理由の一つである ” 置き換え ” について、
解説しましたが、それ以外にも夢には
様々な心理的処理が行われます。

人の心は複雑で、理解しがたい。

憎しみながら愛することもあれば、
泣きながら笑うこともある。心の表情の
数だけ、夢に使われる変数は増えるのです。

夢は繊細で多面的なあなたの心の状態を
映像として映し出す。その夢を作ったのは
あなた自身です。厳密には、あなたの
潜在意識ですが。

いずれにせよ、そこには、客観的で
冷静な描写はありません。全てが主観的、
感情的、そして、プライベートな記憶に
よって支配されている。

支離滅裂に見える夢が、なぜ、そのように
描かれたのかを理解するためには、
自分の内面と向き合う必要があります。

無論、その内面は一人一人違う。

もし、自分の見た夢がちょっと調べて理解
出来るようなものなら、あなたの内面が
誰にでも理解できる薄っぺらなものという
ことになってしまう。

夢が支離滅裂に見えるとしたら、それだけ
あなたの内面に奥行があるということです。

つまり、夢の中であなたが見たものは、
あなたの ” 心 ” そのものです。

 

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