夢を読み解くために、本来は専門知識は
必要ありません。
そもそも、それは、あなたの中から
生まれた創造物ですから、全ての材料は、
あなたの中にある。
芸術家が自分の作品の意図を解説出来る
ように、夢の作り手であるあなたは
自分の見た夢を解説できるはずです。
しかし、夢は支離滅裂で謎めいている。
どうして、このような夢を見たのか
自分でも理解に苦しむ。
それゆえに、夢は神秘的で太古から神や
霊魂といったスピリチュアルな存在と
結び付けられてきました。
ここでは、もう少し現実的な視点で夢に
ついて見ていきましょう。
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潜在意識の視点
なぜ、私たちは、自分で作った夢を理解
することが出来ないのでしょう?
厳密には、夢はあなたが作ったわけでは
なく、あなたの潜在意識が作ったもの
だから、という言い方も出来ますが、
あなたとあなたの潜在意識は、最初から
同一人物です。
ただ、あなたと潜在意識は ” 世界 ” に
対する関わり方が根本的に違っている。
*
まず、現実世界とあなたの関係について
考えてみましょう。
現実世界は、あなたの外側に存在し、
あなた自身は世界の一部として存在
している。つまり、現実世界の全てを
あなたはコントロールすることが出来ない。
では、夢の世界と潜在意識の関係に
ついてはどうでしょう?
夢の世界に潜在意識自体は登場しません。
言わば、世界を作った創造主の立場
なのです。そして、その世界の全てを
コントロールする力を持っている。
ある意味、夢の世界における ” 神 ” です。
潜在意識は、現実世界に似せて作った
架空の世界にあなたをストーリーの
主人公として配置する。
つまり、夢の中で現実世界とあなたの
関係を再現するわけです。
*
もし、あなたが神の力を手に入れた
としたら、それをどのように使うの
でしょう?
例えば、最も高い場所から下界を
眺めたいのならエベレストの頂上に
瞬間移動する。
いいえ、それは神の視点ではありません。
あなたが神ならば、自分の立っている
地面を残して、全ての地面を8848m下に
押し下げるのです。
あくまで、世界の中心はあなたです。
海に浮かぶ船を沈めたければ、大しけに
するでしょう。存在しない動物が必要なら、
創造するでしょう。
一人の人間であることが不都合なら、
二人に分割するでしょう。
必要だと感じれば、いつでもそれを用意
できる。あらゆるシチュエーションを
一から作ることが出来る。
現実世界の常識を超えて。
私たちが自分の作った夢を理解出来ない
のは、人の視点でそのストーリーを
理解しようとするからです。
夢を作る時のあなたは、創造主として、
それを作る。ならば必要なのは、創造主
としての視点です。
信念と疑念
さて、先ほどは、夢を読み解くために
必要なものは ” 創造主の視点 ” と言い
ましたが、それとは別に、もう一つ
重要な視点があります。
それは、” 客観的視点 ” です。
言い換えるなら、冷静沈着な自己観察
ということになるのでしょうか。
自分の中に自己中心的で狡い部分がある
としましょう。
ただ、人は何かしら言い訳をして、
自分を正当化するものです。もしくは、
無関心によって善良な立場を守る。
例えば、食肉用に殺処分される多くの
家畜に対し、私たちは
” 自分とは無関係なこと ” として片づける。
しかし、生きていく上でタンパク質は
重要な栄養源、動物性食品を一切口に
しないというヴィーガンでも無い限り、
私たちの手は既に血に汚れているのです。
それ以外にも、世界には、見過ごせない
差別や迫害、過酷な労働環境、紛争から
逃れる多くの難民など、様々な不条理が
存在している。
それに対して私たちが出来るのは、
寄付をするぐらい。
全ての人は、” 自分は善良で全うな人生
を送ってきた ” などと言えるはずもなく、
もし、胸を張ってそれを主張する人が
いるなら、それは不都合な事実に耳を
塞いでいるだけです。
さて、ここで、自分は善人とは言えないと
自身で認めることが出来るか、どうか・・
それが重要です。
” 待てよ、本当にそうだろうか? ”
と、これまで正しいと思っていた考えや
自分の信念に疑問を投げかけることが
出来る人は客観視を持っている人です。
*
信じたことに疑念を抱くことは、とても
難しい。大抵、人は不都合な事実に内心、
気づいていながらも、都合の良いこと
だけを信じ続けようとする。
夢は、その人の本心を描きます。
ゆえに、本心に耳を塞ぐことに慣れて
しまうと、潜在意識のメッセージを
正確に受け取ることが出来なくなる。
次は、とある女性が見た夢の一例です。
待ち合わせ時間になっても
恋人が現れない。
何度も電話をかけるが、その度に
” もうすぐ着くから ” と言われる。
この夢は、彼女が作ったものですから、
恋人に遅刻をさせているのは、彼女自身
ということになります。
つまり、その男性と本当は会うべきでは
ないと思っている。しかし、それは
念願の恋人だったので彼女は夢を次の
ように解釈してしまうのです。
” 彼と付き合い続けるには、
忍耐が必要だというメッセージ ”
男性は、既婚者です。
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唯一の判断基準
客観視が重要である理由は、その解釈が
正しいかどうかを確かめる方法が
自身の判断に委ねられるからです。
あなたの見た夢とあなたの関係は、丁度、
試験問題と、それを作った作成者との
関係に似ています。
解答を知らなければ、問題を作ることは
出来ない。最も問題を理解する者は、
それを作った人です。
ゆえに、夢を見た本人が冷静な判断、
客観視を見失ってしまうということは、
唯一の判断基準を失ってしまうことに
等しい。
*
先ほどの待ち合わせの夢について言えば、
筆者は ” 会うべきではない ” という彼女の
心理を描いていると解釈したわけですが、
夢を見た彼女自身が客観視を失って
しまった状態では、この解釈は、
もはや意味を持ちません。
もし、彼女が、心の中に男性と距離を
置きたがっている自分がいることに
気づけたとしたら、筆者が解釈をする
までもなく、自ら正しい ” 答え ” を
導き出すでしょう。
そして、その答えに
” 腑に落ちる感覚 ” を得る。
夢を見た本人だけが感じ取ることが
出来るこの ” 腑に落ちる感覚 ” だけが、
唯一の判断基準なのです。
*
さて、” 腑に落ちる感覚 ” とは、
具体的には、どういったものでしょう?
それは、雷に打たれたかのような衝撃的な
インパクトを持つわけではない。
夢についてしばらく考えた後に、ふと思う。
” ああ、そういうことなのかも・・ ”
” 確かに、言われてみると、
そうかもしれない・・ ”
丁度、何かの拍子に忘れかけていた
昔の記憶を思い出すような淡い感覚。
そもそも、その夢は、あなた自身が
作ったものですから、その夢の意味に
全く心当たりが無いという状況は、
まず、ありません。
なので、謎が解けた時に、まさかの展開に
驚くというようなドラマティックな体験
にはならない。
大抵、何となく最初から分かっていた
ような感覚として、それは、やってくる
のです。
微妙な感覚の違い
さて、夢解釈するためには、心を客観視
することが重要と言いましたが、
それに加えて、どれぐらい深く客観視
できるかということも大切です。
” 深く ” とは、一体、
どういったことでしょう?
例えば、不快感について考えてみましょう。
” あの人見てると、
何か腹が立ってくるんだよね ”
” これといって理由は無いけど、
生理的に受け付けない ”
こういった何だかよく分からない苛立ち、
不快感は誰にでもある体験です。
それは、人に対してだけでなく、自分の
置かれている状況やニュースを見ていて
感じる時もありますが、夢の中で、
登場する人物や特定の場面で感じることも
あります。
さて、日常生活では、そうした何だか
分からない感覚を ” 生理的 ” とか ” 微妙 ”
という適当な言葉で片づけてしまうことも
出来ますが、夢解釈では、特定の登場人物
や特定の場面で感じたその感覚を掘り下げて
いきます。
*
例えば、あなたの夢に架空の男性が登場
したとしましょう。
その男性の年齢は、どれぐらいだったか?
服装はどうだったか? 髪型は?
何をしていたのか?
という細かな設定を追求する場合も
ありますが、それとは別に、その男性を
見た時のあなたの印象に注目していくのです。
ただ、” 嫌な感じだった ” と一言で
終わらせるのではなく、
” 見下している感じがした ”
” よそよそしくて関わりたくなさそうな
雰囲気だった ”
” 今にも噛みつきそうな殺気立った
感じがした ” など、
不快感にも、様々な種類があります。
これは、不快感だけではなく、悲しみや、
怒り、喜びといったあらゆる感覚に
言えることです。
言葉で言い表すのに苦労するぐらいの
微妙な感覚の違いまでを掘り下げて
いくのです。
呼吸
今回は、夢を読み解くための視点について
大まかに解説していきましたが、ここで
読んだことを実践するには、少々、骨が
折れるかもしれません。
それは、筆者の述べていることが専門的
であるという意味ではなく、あなた自身
の心が、容易に理解できるような単純な
ものではないからです。
まずは、自身を理解するために、
自身と向き合っていく時間が必要です。
人と人がコミュニケーションによって
理解を深め合うように、心の奥底に住む
” もう一人の自分 ” が発する小さな声に
耳を傾けてみましょう。
*
夢を解釈するというのは、言うなれば
” 自己観察 ” です。
それは、タロットカードや星座占い
のように、その道のエキスパートから
アドバイスを得るというような
” 答え ” が自身の外側に存在するもの
ではありません。
” 答え ” は、自身の中にあり、それを
見つけ出すという作業が夢解釈です。
夢とは、最もあなたの身近にありながら、
最も見過ごされやすいもの。
それは、” 呼吸 ” のような存在。
常に行ってはいるが、それを意識する
ことは殆ど無い。しかし、それが私たちを
生かしている。
もし、人が夢を見なくなったら
どうなるのでしょう?
表面的には何も問題が起こらないように
見えても、きっと、その歪みはいずれ
私たちに及ぶのです。
思わぬ形で。
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