夢解釈の辻褄が合わない時|テーマと整合性検証

夢を解釈する上でストーリーの ” 整合性 ”
を検証する場面があります。

つまり、一つの解釈を当てはめてみた時、
ストーリーの中の様々な演出一つ一つが
辻褄に合っているか、合っていないか
ということを検証していくのです。

無論、あまりに緻密な分析になると、
相当の時間が取られてしまうので
ある程度、ざっくりとした検証です。

例えば、登場人物について、セリフは
検証対象にするが、特に目立った演出でも
無い限り、服装については無視する
といった感じです。

整合性検証で、他の演出は辻褄が合って
いるが、一箇所だけ辻褄が合わないと
いうこともよくあります。そういった
場合は、解釈をもう一度やり直す必要が
あります。

根気のいる作業ですが、解釈が正しいか
どうかを判断するための最終チェックの
ようなものだと考えてください。

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過去についた嘘

次は、とある男性が見た夢の一例です。

車を運転している。
 
助手席に現在交際中の恋人が、
後部座席には元恋人が座っている。
 
気まずい雰囲気、
三人は終始無言の状態。

夢の中では、恋人を乗せて車を運転して
いるという日常的風景が描かれている。
ただ、なぜか後部座席に以前付き合って
いた女性が座っていた。

” 元恋人とは、
喧嘩別れをしてしまったんです ”

彼は言いました。

” 喧嘩の原因は何だったのですか? ”

” 彼女が急に怒り出してしまって・・ ”

” 何の理由も無く急にですか? ”

” 電話で話していたら、
突然、声を荒げて騒ぎはじめて ”

” それは、あなたが何か言った後に?
それとも一方的に? ”

” そうですね。多分、言った後です ”

” 何を? ”

” 確か、約束の日に会う事が出来なく
なったという感じのことを・・ ”

” 元恋人は、それについて何と? ”

” しつこくキャンセルの理由を
聞いてきたかな・・ ”

筆者が最初に引っかかったのは、彼が
破局の原因をはっきりと話したがらない
様子でした。

” 理由をお話に? ”

” いえ、話しませんでした・・ ”

” もしかして、破局の原因は、夢にも
登場している現在の恋人と何か関係が? ”

” ええ、まあ、そうですね・・ ”

彼の説明を要約すると、元恋人と交際中、
現在の恋人と出会ったが、元恋人に別れを
切り出すタイミングを逃し続け、言い出す
ことが出来なかった。

” つまり・・・元恋人と現在の恋人、
お二人とお付き合いされていた時期が
あったということですか? ”

” ええ、まあ・・ ”

” それから、間もなくして元恋人とは
破局した・・ ”

” ・・ええ、そんな感じです ”

” ところで、夢解釈を依頼されたのは、
何か心配事があってのこと、ですよね? ”

” ええ、この夢は、元恋人との過去が
きっかけで、今の恋人との関係が壊れる
予兆じゃないかと思いまして・・ ”

” 今、交際されている女性とは、
上手く行ってないのですか? ”

” そうですね。
最近、態度が冷たいというか・・ ”

” その理由に心当たりは? ”

” ・・・・いや、無いです・・ ”

筆者は、彼が現在の恋愛に不安を感じ、
それが夢になっているのだとしたら、
やはり、元恋人の存在が関わっている
のだろうと思いました。

” 現在の交際中の女性には、
過去の破局の経緯は話していない? ”

” 話すわけないじゃないですか・・
そうなったら終わりです。
今の恋人と付き合う前に一人身だと
嘘をついたので・・ ”

” なるほど、あなたの過去を知られると
困るということですね? ”

” はい。最近の冷たい態度が、もしかして
過去の嘘がバレたんじゃないかと ”

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解釈の不整合

” ところで、夢の中で三人は、
どこに向かわれていたのでしょうか? ”

” ・・・自宅だったかな ”

” あなたのご自宅に? ”

” ええ、多分・・ ”

確かに彼の言ったように、この夢が
過去の嘘をきっかけにした破局への前兆
ということであれば、辻褄は合います。

夢の中で彼と恋人は自宅に戻り、
後部座席に座る元恋人についての話し合い
が始まるのでしょう。

この解釈が正しければ、後部座席に
座っているのは元恋人そのものではなく、
隠しておきたかった ” 過去の恋愛 ” の
象徴として登場していることになります。

では、車内が夢の舞台となっているのは、
車の中で恋人から話を切り出される未来が
待っているということなのでしょうか?

ただ、筆者には、この解釈に若干の違和感
を覚えました。

彼は現在の交際を破局させたくないという
強い思いがある。ならば、夢の内容を
都合良く書き換えるはずです。

ストーリーの流れとしては、三人で自宅に
戻れば、現在の恋人からこう言われることは
確実です。

” 何、この女? あなた私と付き合う前に
言ったよね? 恋人はいないって ”

冷却期間中にそのような事態になれば、
彼が恐れているとおり、二人の関係は
さらに悪化することは間違いないでしょう。
それに対して、この夢では何も手が
打たれていない。

彼の潜在意識は、悲劇を受け入れるつもり
なのでしょうか? もしそうならば悩む
必要はありませんし、夢を作る必要も無い。

これは、もしかしたら、今後訪れるで
あろう悲劇を回避するための夢ではない
のかもしれない・・

何かが欠けている。
筆者は、そう思いました。

” 夢の中では、三人で自宅に戻られる途中
ということでしたが、結局、ご自宅には
戻らなかった? ”

” ああ・・戻った・・と思います ”

どうやら、彼は夢の内容を全て話しては
いなかったようです。

” 到着した自宅で、今後のことについて、
話し合いが行われたりは? ”

” してません。普通に家に戻ってから、
三人はそれぞれの部屋に ”

” つまり、同棲している設定だった? ”

” まあ、そうなりますね・・ ”

” 一応、確認しておきたいのですが、
元恋人とは、破局後に一度も会っては
いないんですよね? ”

” ・・何でそんなことを尋ねるんです? ”

” あなたが現在もお二人とお付き合いを
続けているのであれば、解釈の整合性が
取れるので ”

” え・・ ”

つまり、彼は一度は元恋人と破局したが、
その後よりを戻し、現在、二人の女性に
二股をかけている状態です。確かに、
この事実が発覚すれば、彼にとっては
” 終わり ” になるのでしょう。

この夢は悲劇の暗示ではなく、彼が理想
とする三人の関係を描いている。
三人で同居するという形で、恋人二人を
すぐに会える距離に置き、彼が会いたいと
思えば部屋のドアをノックすればいい。

ある意味、自宅は彼の ” 人生 ” を表し、
そこに二人の女性を住まわせているのです。

彼が夢の最後の場面を話さなかったのは、
自分の心配事とは無関係だと切り捨て
られたか、他人に話すには不都合な描写が
あったのか。

筆者がこの解釈を話すと、それっきり
彼からの連絡は来なくなりました。

認識のクラスター

彼は、なぜ、この夢が破局の前兆だと
思ったのでしょう?

もし、これが単なる彼の願望を描いている
というなら、そして、彼が夢について少し
でも理解していたなら、夢を見た時点で
何となく意味が分かったのかもしれません。

現実世界では、彼と現在の恋人は、
あまり上手くいっていなかった。そして、
その理由が分からない。その一方で、
彼の中には常に後ろめたさと、事実発覚
に対する ” 恐れ ” に囚われている。

冷たい態度の理由を知りたがっている彼が、
自身の ” 裏切り行為 ” と結び付けるのは
必然でしょう。故に、彼から見れば、
この夢は、” 恐れている事 ” を描いている
ようにしか見えない。

彼の持っている願望そのものが破滅を招く
火種なのです。潜在意識は、彼にとって
都合が良すぎる願望を再現し、こう言って
いるのかもしれない。

” 君が求めているのはこういうことだろ。
恋人には見抜かれているぞ ”

今回の夢では、悲劇への回避策が無い
という一つの不整合によって解釈の誤りに
気づくことが出来ましたが、それは、
注意深く夢を観察しなければ見落として
いたでしょう。

とは言え、不整合を発見した時点では、
筆者に確信はありませんでした。ただ、
この話には何かが欠けているという
違和感だけがあった。

そこで、見落とされたピースを探すために
彼にいくつかの質問をしました。筆者の
推測を先に話せば、彼は質問の意図を読み
取り、最後の場面のことを話さなかった
かもしれません。

結果的には、彼は夢の核心部分を話し、
筆者の推測は正しかった。ですが、
セッションとしては、依頼者との間に
最後まで信頼関係が築けなかったという
意味で ” 失敗 ” でした。

筆者は、依頼者の嘘に対して、一体、
どうすべきだったのか? 

今でも、すっきりしないまま、心の中に
引っかかっています。

さて、ストーリーの ” 整合性 ” について
見ていきましたが、多分、夢を読み解いて
いくという作業の中では整合性チェックは、
ある程度、解釈の方向性が見えた後に行う
作業だと思います。

また、ストーリーに不整合があるのか
どうかを見極めるというのは、やはり、
経験値が必要になってくるかもしれません。

多分、ビギナーにとっては支離滅裂な
夢の内容全てが不整合に見えるでしょう。
一体、何から手をつけてよいか分からない
という状態なら、まだ整合性チェックを
する段階ではないのでしょう。

整合性を見極めるためには、やはり、
ストーリー全体からその夢が何を描こうと
しているのか文脈を理解しておくことが
大切です。

夢のテーマは、
大抵、一つの事柄を描いている。

今回の夢で言えば、彼の都合の良い願望と
それに伴う罪悪感ですが、見方によっては
願望と罪悪感は別々のものであって、
二つの事柄を一度に描いているようにも
思えます。

こう考えてください。夢とは、私たちの
” 認識 ” です。

例えば、私たちは一度に二つのことを
同時に考えることは出来ませんよね。
仕事について考える時は、仕事のスイッチ
を入れ、恋愛について考える時は、恋愛の
スイッチを入れる。

しかし、もし好きな人が会社の上司で、
仕事で頑張れば上司に注目されるとしたら、
仕事と恋愛、両方について同時に考える
といったことはありえます。

” 仕事で頑張る = 恋の成就 ” という関連
付けがあなたの認識になっているなら、
それは一つのスイッチで作動する。

認識の中で、いくつかの事柄が関連し合い
まとまった ” クラスター ” になっている
場合、潜在意識はそれを一塊のテーマ
として夢に描きます。

今回の夢でも、元恋人と今の恋人は、彼の
願望の中で関連しあっており、潜在意識も
それを ” 一つの事柄 ” として描いている
わけです。

いずれにせよ、ストーリーの底辺には、
一貫したテーマが横たわっているはずです。
それを見つけ出すことが出来れば、
整合性を見極めるヒントになるでしょう。

 

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