” 最近、全く同じ夢を何度も見ている ”
と依頼者から聞くことがあります。
ただ、夢の内容をよく伺うと、実際は
100%完全一致した夢を見たというわけでは
ありません。ストーリーが酷似していた
としても、細部に何らかの ” 誤差 ” がある
ことがほとんどです。
ただ、夢を見た人にとってその誤差は、
無視してもよいほど小さなものなので、
” 全く同じだったと言っても過言ではない ”
という意味で ” 全く同じ夢 ” と表現する
のでしょう。
つまり、そこには切り捨てられてしまった
小さな ” 誤差 ” がある。
果たして、その小さな違いがそれほど
重要なのでしょうか?
ストーリーの大部分が同じならば
” 同じ夢 ” でよいのではないでしょうか?
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新社会人の違和感
次は新社会人になったばかりの
とある青年の見た夢の一例です。
人混みの流れの中にいる。
自分はそれに巻き込まれ、
進みたい方向に進めない。
少し高いところに立っている係員が
メガホンを持って人々を誘導している。
この夢を見た青年は、新社会人として
某企業に就職してから、これと同じ
内容の夢を繰り返し見るようになったと
言います。
この夢は、社会人として働き始めた彼の
社会に対する ” 不信感 ” を表しています。
大人たち皆が同じ方向を向いて、疑問を
持つこともなく、その場の空気に合わせて
指示どおり働き続ける姿。
彼は、その流れに逆らおうとしている。
*
最初の夢を見てから、数日後、彼は再び、
全く同じ内容の夢を見ます。
まず、同じ夢を見続ける理由として、
彼の感じている ” 不信感 ” が今だ解消
されていないということが挙げられます。
社会人の一員として働き続ける限り、
しばらくは、その試練と戦わなければ
ならない。普通ならば、その現状が、
一、二週間で変わることはありません。
同じ夢を繰り返し見たとしても不思議
ではない。
もし、連続する夢を止めたければ、
現実世界の状況が変わるか、彼自身が
変わるしかないのでしょう。
その後の ” 同じ夢 “
彼は、二度目に見たの夢についても
” 全く同じ夢だった ” と言います。
そこで筆者は、夢の内容を詳細に聞き取る
ことにしました。
” 最初の夢と今回の夢で
細かな違いはありましたか? ”
彼はほとんど同じだったが、若干違っている
部分があると答えます。
それは、最初の夢では人の流れに逆らえず、
立ち止まることも出来なかったが、
二度目は辛うじて立ち止まることが出来た。
つまり、彼は最初、社会の潮流に圧倒され
ながらも、その数日後には微力ながら、
それに抵抗する精神的強さを手に入れたと
解釈することが出来ます。
最初の夢と二度目の夢の小さな違いは、
数日前に比べて彼の心が少しだけ成長した
ことを表している。
*
彼は、さらに数日経って同じ夢を見ます。
三度目の夢でも、内容としては、ほぼ変化
はありませんが、今回は、人ごみの中で
立ち止まり周りを観察した。
夢の中で、” また、この夢だ ” と思いながら、
周りをじっくり見まわすと、流れの先に、
人混みが少ない箇所を見つけたと言います。
彼は、この時点で、ただ立ち止まるだけ
でなく、周りの状況を観察する冷静な行動
を取っている。
夢の中で見つけた人混みが少ない箇所は、
彼の中に、
” もしかしたら、少し先に進めば、
今よりはマシな状況になるかもしれない ”
という楽観的な視点を持てるゆとりが
出来たということかもしれません。
彼は同じシチュエーションの夢を見ては
いますが、その中で少しずつ違った対応を
している。繰り返される同じ夢の中で、
心が確実に変化しているのです。
無形の誤差
実際、人は何もしなくても変化していく
ものです。
夢はその人の心が作り出すものですから、
普通ならば心の変化に伴い、夢も変化
していくはずです。むしろ、100%
完全一致の夢を見る方が難しいでしょう。
もし、そうであるというなら、心が全く
変化していないということになりますから。
時間を止めるか、数日間の記憶を失うか
しなければ、心の変化を止めることは、
実質、不可能です。
*
例えば、今回のケースでは、三度目の夢を
見た青年は夢の中で ” また、この夢か ”
という認識を持っています。
この認識は、最初の夢、二度目の夢には
存在しなかった認識です。そして、
この認識によって彼は前回とは違う行動を
取るゆとりと冷静さを身に着けている。
シチュエーションとしては、
人混みの中にいるという同じ状況が
描かれているだけですが、その中で持った
認識や考えたことは、映像としては表現
されていませんが、確実に ” 誤差 ” と
言えます。
夢の中で本人が思ったこと感じたことは、
一見するとストーリーとは無関係に
思えますが、潜在意識はそれら無形の
パーツについても視野に入れて夢を設計
します。
*
今回のケースのように解決されないまま
放置されている問題意識が連続した
” 同じ夢 ” になることがあります。
それは、実際に解決するか、自身の考えを
変えるか、もしくは、その状況に慣れて
しまうか、いずれかによって、夢は変化し
繰り返しが無くなっていく。
大切なのは、同じ夢の中にある
” 小さな誤差 ” を観察することです。
それは、ストーリーの変化だけでなく、
見た目には分かりにくいちょとした心の
動きや、その時に感じたことなど、
無形の変化も含まれます。
その小さな誤差を注意深く観察することで、
同じ夢に見せかけながらも、そこには、
繊細な心の変化が克明に描かれているのを
発見出来るでしょう。
こうして、心の中で起こっている変化を
自覚した瞬間、それ自体が ” 心の変化 ”
になるのです。
そして、その変化は、次に作られる夢に
影響を与えることになる。
そうして良い循環が生まれ、
連鎖を断ち切るための下地が出来上がる。
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