何かを失くす夢|失われる大切なもの

何かを紛失してしまうという夢。

家の鍵だったり、財布だったり、携帯電話だったり、車そのものが駐車場から消えてしまうというようなケースもあります。

こうした日常的に使っているものが、どこかにいってしまい、探しても見つからないといった困惑した状況。

物に限らず、例えば、スマホで撮った写真が見つからないとか、画面からアプリが無くなっているとか、誰かのアドレスが削除されているという場合も、ある意味 ” 紛失物 ” と言えるでしょう。

こうした何かを失くす設定の夢は、とても奇妙な側面を持ちます。

夢を作ったのは、誰か?

無論、それは夢を見ている本人です。つまり、自ら紛失物を作り、それを自分に探させるという矛盾した行為を夢の中で行っていることになります。

一体、潜在意識は、私たちに何をさせたいのでしょう?

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” 紛失物 ” という幻想

例えば、スマホ本体を失くすという夢について考えてみましょう。

まず、夢の中では、スマホを失くすという設定にはなっていますが、それは ” 実際に紛失したわけではない ” ということを理解しておく必要があります。

夢はイメージだけで構築された世界。最初からスマホという物体は存在しない。

” 紛失した ” と言うと、あたかも目の前に無いだけで、実際は、どこかに存在するかのように思えますが、それは初めからどこにも存在していないのです。

単にイメージとして映像化されたか、されていないかという違いに過ぎない。

なので、夢の中で ” 失くした “と感じるその感覚は、厳密には、失くしたと思い込んでいるだけです。

全ては夢の作り手である潜在意識のコントロール下にあります。

夢の中でそれを消し去ることも出来ますし、必要であれば夢を見ているあなたの目の前にイメージ化することも出来る。

ゆえに、” 紛失物がどこにあるのか? ” という疑問は、無意味です。

夢の世界には ” 失くす ” という概念は存在しません。全ては夢を見ている本人が作り上げたものですから、本人の目が届かないスペースは無い。

夢の中の紛失したという設定は、ある意味、カモフラージュです。

隠された別の意図

カモフラージュですから、そこには、別の意図が隠されているということです。

スマホが紛失した場合、そこには ” 無くなって欲しい ” という思惑があるわけです。

ただ、スマホといってもその用途は人によって様々。つまり、スマホがその人にとってどういった役割を持つのか、どういった価値を持つのかということを考える必要があります。

例えば、用途のほとんどがLINEアプリへのアクセスという人なら、メッセージのやり取りに疲れて、しばらくアプリを開きたくないという心理がスマホを紛失させているのかもしれません。

次の日に友達に、なぜ返信しなかったか聞かれても ” スマホを失くした ” と言い訳が出来る状態を夢の中で作っている。

もし、仕事の連絡がよく入ってくるという人なら、仕事の連絡を受けたくない心理がスマホを失くす夢を作っているのかもしれない。

もし、家の鍵を失くしたというなら、家に入りたくない事情があるのかもしれないし、もしくは ” もう少し外出すべきだ ” というインドア生活に対する警鐘なのかもしれません。

運動不足を何となく感じていた人ならば、駐車場から車を消し去って、歩かなければならない状況を作っていると考えることも出来る。

何かを失くすという演出には、常に何らかの意図が隠されているわけです。

無論、解釈の仕方は、上記に挙げたものばかりではありません。それは、個人の抱えている事情に合わせて解釈していくしかない。

要は、潜在意識が ” 失くす ” というシチュエーションによって、どういった目的を果たそうとしているのかを考える必要があります。

リビングから消失したピアノ

では、少々、複雑なケースについて見ていきましょう。

次は、とある女性が見た夢の一例です。

リビングを通りがかると、置いてあったピアノが忽然と無くなっている。
 
家の中を探し回るが、どこにも見当たらない。

ピアノというかなり大きなものが、リビングの一画から、突然姿を消すというミステリアスな夢です。

まず、筆者は、この夢を見た彼女にピアノについていくつかの質問をしました。

ピアノは、自分が子供の頃に買ってもらったもので、当時は、教室に通ったりして練習をしていたが、今では、ほとんど弾くことはないということでした。

ちなみに、ピアノは今でも自宅のリビングに置かれており、夢の中では、どういうわけか、それが完全に消えていた。

この夢は、どう解釈すべきでしょう?

前項の解釈に従えば、彼女の中に ” ピアノを失くしてしまいたい ” という心理があったと読むことが出来ます。

例えば、練習がきつくて弾きたくないという気持ちがあるのなら、ピアノが無くなれば都合がよいわけです。

しかし、彼女は現在ピアノを弾いておらず、それが消えてしまったとしても ” 都合が良い ” と言うことにはならない。

そして、ここで浮かぶもう一つの疑問は、なぜ、今のタイミングでこの夢を見たのかという点です。

彼女はピアノをやめてから十年以上経っている。その間、リビングには、それがずっと置いてあった。

十年以上も前に弾くのをやめてしまったピアノを今頃、夢の中で消し去る必要があったのでしょうか?

十年のブランク、そして変化

筆者は、十年もの間、弾くことの無いピアノをリビングに置き続けているということが、少し、気にかかり次の質問をしました。

「この十年の間、ピアノを手放そうと思ったことはありますか?」

彼女は、家族の間で何度か、そういった話は出たことがあるが、自分がそれを拒んできたと言います。

話を聞く限り、ピアノは子供の頃の思い出の断片として、彼女の中に深く刻まれているようでした。

彼女は、言いました。

「もしかしたら、また弾く時が来るかもしれない。その時のために・・」

ピアノを手放すという話が出たときも、そう言って反対したそうです。

筆者は尋ねます。

「再び弾き始めるということは?」

彼女は、今は事情があって無理だと答えます。理由は、一ヵ月ほど後に仕事の都合で実家を離れなければいけないというのです。

また、彼女は、ずっと両親と一緒に暮らしてきたので、会社の用意した社宅で一人暮らしを始めるという新生活に不安を感じていると言います。

筆者はこの経緯を聞いて、ようやく夢の意味を理解しました。この夢は、彼女の人生の変化を描いている。

スケープゴート

彼女は子供の頃から住み慣れた実家と両親から離れて ” 一人暮らし ” という新しい人生を始めようとしています。

そして、そのことに不安を持っている。

会社の転勤辞令は、彼女にとって、これまでずっと続いてきた ” 暮らし馴れた環境 ” を失うに等しい出来事だった。

つまり、彼女が、これから失くす予定の ” 日常 ” がこの夢に描かれているのです。

しかし、夢の中では、彼女が失うものは、日常でも、実家でも、両親でもなく ” ピアノ ” です。

「夢の中でピアノが消えたのを知った時、どう感じましたか?」

筆者の質問に彼女は次のように答えます。

「とても困惑しました。ずっと大事にしてきたものが、突然、無くなったことが凄く悲しかった。心にぽっかり穴が開いたような・・」

彼女の感じた深い損失感は、実際はピアノに対するものではなく、彼女がこれから失おうとしている ” 暮らし馴れた環境 ” に対するものです。

もし、失うとしたら、これまでの人生そのものと、リビングの片隅で、ずっと彼女の人生を見守り続けてきたピアノのどちらを選ぶか?

彼女の潜在意識は、夢の中で子供の頃から大切にしてきたピアノを身代わりに差し出したのです。

それは、きっと、彼女にとっても苦渋の選択だったでしょう。

何も失わないという選択

ただ、この夢には、次のような側面もあります。

ピアノは、彼女のこれまでの人生を象徴しているかのようです。

子供の頃からずっと続いてきた実家暮らしという人生。そして、ピアノは常に彼女のそばにあった。

この夢を作ったのは彼女自身です。

人生の象徴であるピアノを断腸の思いで消し去ることで、彼女は変わろうとしているのかもしれない。

でなければ、潜在意識は、もっと簡単な解決を望んだでしょう。何も失わず、会社の辞令は無効だったという夢を作ればよいのです。

しかし、そうしなかった。

この夢の意味は、単なる深い喪失感を描いてるのではなく、彼女の前向きな気持ちを試そうとしている。

” いつまでも、暖かい巣の中で暮らすわけにはいかない。さあ、自分の翼で飛びなさい ”

筆者には、彼女の潜在意識がそんなふうに言っているようにも思えました。

さて、今回は紛失物についての解説をしてきました。

夢とは多面的です。どんなケースであれ決まった答えなどありません。大切なのは、夢を見た人がどんなストーリーを歩んできたのか、それを理解することです。

全ての夢は、その人の人生をベースに作られる。

だから他人が理屈をつけて夢の意味を解釈しても、本当の意味で読み解いたとは言えない。その人がどんな人生を歩んできたか知らないのですから。

つまり、夢を読み解ける人は、それを見た本人だけなのです。

筆者は依頼者の夢を読み解きます。しかし、それはとても表面的な範囲。全てを読み解くわけではありません。

結局、あなたの夢の意味は、あなたが見つけるまでどこにも存在しないのです。

 

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