体から異物が出る夢。
一見すると、そのありえない状況から、健康上の悪い暗示ではないかと心配になるかもしれません。
実際、夢は、とても複雑です。パターン別に抽象的な解説をしたとしても、あなたの夢に当てはまるとは限らない。
ここでは具体例を挙げながら、異物に関する夢について見ていくことにしましょう。
夢を読み解くには、ストーリー全体、夢を見た本人が、現在どういった状況に置かれているか、実生活などを含めた広い範囲を視野に入れる必要があります。
何よりも、夢の作り手の心を理解しなければならない。作り手とは、あなた自身です。
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潜在意識の表現にルールは無い
次は、筆者が実際に見た夢の一例です。
鼻をかんだら、大量の鼻水が出る。
夢を見る数日前から、風邪を引いていました。
この夢は、体内から病気が外に出ていくイメージが描かれている。つまり、病気が治る暗示と解釈することが出来る。
潜在意識が、自身の体調が改善していることを、いち早く察知したということでしょう。
ただ、筆者の場合は、鼻水という形で風邪の状態を表現してはいますが、風邪を引いて、その人がどういった症状になるか、それによっては、また違った表現になるでしょう。
例えば、風邪を引くと必ず頭痛がするという人なら、回復の暗示として目から大きな目やにが取れるとか、耳から何か出てくる、といった表現になる可能性もあります。
少し特殊な例を挙げるなら、子供の頃に風邪をひくと、母親が決まってリンゴを絞り、手作りのジュースを作ってくれたという思い出のある人ならば、風邪を自覚する前に、リンゴジュースを飲んでいる夢を見るかもしれません。
必ずしも、夢に描かれる表現は決まっているわけでは無く、その人が置かれた状況、その人が個人的に持っている記憶、イメージによって内容は変わるのです。
自分が、その病気にどんなイメージを持っているか、ということを整理しておくと、解釈の糸口になるかもしれません。
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さて、このケースでは、筆者に風邪をひいているという認識があったため、病気が快方に向かう予兆、という解釈をすることが出来ました。
もし、他の誰かが、筆者と全く同じ夢を見たという場合は、どうなるのでしょう?
夢の世界は、全てが ” 個人的イメージ ” の集合体。そして、そのイメージの一つ一つは、夢を見た本人が、これまで生きてきた人生の中で培ってきたものです。
だから、筆者ではない誰かが、同じ夢を見たからといって、全く同じ解釈になるはずはないのです。
例えば、今現在、人間関係に悩んでいるというなら、それが鼻水の夢として描かれるかもしれません。(その人が、人間関係にドロドロとしたイメージを持っていた場合の話ですが )
もしくは、単に、寝ている最中に鼻づまりを起していた、ということも考えられます。
ネット上で見つけることが出来る解釈のほとんどは、単なる” 傾向 ” です。
そもそも、潜在意識は、既存の解釈に合わせて夢を作ったりはしない。もっと、勝手気ままで自由です。
置き換えられた問題
では、もう一例、夢を紹介しましょう。
仕事中。足の裏に大きなニキビがあり、歩きにくい。
裸足になって、ニキビを潰すと、固い石ころが出てきた。
足の裏から石が出てくる、という奇妙な状況。このケースは、どう解釈すべきでしょう?
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この夢を見た男性は営業職で、夢の中でも背広を着て歩いていたということです。
筆者は、彼に尋ねます。
「もし、実際に足に怪我をされたら、私生活に何か影響はありますか?」
彼は即座に答えます。
「それは困ります。仕事になりませんね。方々、歩き回るんで」
営業職の彼にとっては ” 足 ” は、仕事上、必要不可欠な部分であり、その大切な足が ” 歩きにくい ” ということから、仕事がスムーズでなく困難を伴っている状況、と読むことが出来そうです。
そこで、次のように尋ねます。
「今、お仕事で何か問題を抱えていますか?」
彼いわく、現在、とある顧客との契約を取り付けるため、幾度となくその会社に足を運んでいるが、なかなか条件が厳しく、契約には至っていないということでした。
「夢の中でも、その会社に向かう途中、という設定でした 」
彼は言いました。
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では、夢の中で歩きにくさの原因となっている ” 足の裏のニキビ ” には、どんな意味があるのでしょう?
ここまでの彼の話を聞くと、次のような解釈が可能です。
仕事上の問題を解決するのは難しいですが、ニキビならば潰すことで解決できる。
彼は仕事上の問題を、夢の中で ” ニキビを潰す ” という簡単な方法に置き換えて解決しようとしている。
” 問題の置き換え ” は、潜在意識がよく使う技法の一つです。
例えば、何かと出費がかさむ時期に、体から血を流す夢を見ることがあります。経済的出費を避けることは難しいが、それが ” 血 ” ならば止血すれば済む。また、それは自然に治癒し、元に戻る。
” お金 ” と ” 血液 ” のどちらも、自分にとっては ” 失いたくないもの ” という点では一致しているので、その共通点を利用して置き換えを行い、より都合の良い状況を作るわけです。
と言って、あなたが、もし血を流す夢を見たとして、それは出費の暗示と解釈すべき、と言っているわけではありません。
無論、あなたに、お金以外に大切な何かがあるというなら、それが血として描かれる場合はありますし、血とは限らず、他のものに置き換えられることも、十分あり得ます。
あくまで、潜在意識が、夢の作成過程で何をしているか、というプロセスの話です。
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異物からの連想・カモフラージュ
ニキビを潰すと、石が出てくるという部分。
ここで ” 固い石 ” が、彼にとって、何であるのかを考える必要があります。
彼が現在置かれている状況から考えると、なかなか首を縦に振らない顧客の頑なな態度から ” 固い石 ” というイメージを連想したのかもしれません。
もしくは、崩したくても出来なかった難題という意味で ” 固い石 ” を連想したという解釈もありえます。
彼自身が ” 固い石 ” から何をイメージするのかが、解釈の鍵です。
それが結果的に、体外に出るという結末になっているので、仕事上の問題がいずれ解決する暗示、として読むことが出来る。
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ここで、” 連想 ” について、少し説明しておきましょう。
潜在意識は、夢の中で ” 置き換え ” によって、あたかも問題は解決されたかのように思わせたいのです。
心に引っかかるわずらわしいストレスを解消し、ぐっすり眠ってもらいたい。
彼が、潜在意識の仕組んだカモフラージュを見破ってしまえば、わざわざ置き換えた意味が無くなってしまう。
” 心に引っかかる事があったんだが、何だったかな・・”
” ほら、石が取れた。もう大丈夫さ! ”
” 何か違う気がするけど・・ま、いいか ”
仕事上の問題を ” 固い石 ” に置き換え、紛らわしい状況をあえて作るのです。
なので、置き換えられたものから、潜在意識の意図を探るというのは単純ではありません。例えるなら、幼児の落書きを見て、何が描いてあるのか言い当てるような感じです。
つまり、この夢における ” 固い石 ” は、一体、何を隠蔽するためのものか? という視点で、異物に対する推察をしていくわけです。
このケースでは、夢を見た男性の現在置かれている立場、抱えている問題、という夢の内容には含まれていない現実世界の背景を理解しなければ ” 固い石 ” が、何を
意味しているのかが分からない。
夢に登場する全てのものは、必ず、現実世界と何らかの接点を持っている。夢とは、現実の延長線上に作られるのです。
問題解決の向こう側
さて、どうして、異物が体外に出ることが問題解決の暗示なのでしょうか?
この夢は一見すると、問題が解決することに焦点が当たっているようにも見えますが、実際には、問題が解決した後の段階までを見据えて作られています。
このケースでは、彼の抱える問題とは、提案された条件が厳しく、顧客との交渉が難航しているということ。
仮に、それが解決、つまり、契約を結ぶことが出来たとしたら、その後に待っているのは、顧客の信用に応える仕事をしなければならない、という新たな課題です。
現実とは、そう単純ではありません。どんな問題にも解決すれば、新たな課題というのが出てきます。
潜在意識は、解決した後に何が待っているかをすでに理解しており、それを演出によって打ち消そうとしている。
問題そのものを描かずに、異物が体外に出るというシンプルなストーリーにすることで、解決の後にやってくる面倒な責務を回避しようとしているのです。
石ころが体外に出るだけなら、ただ、傷口が治るのを待っていればいい。
単に、最初の問題を解決したいというだけなら、交渉が成立した夢を作ればよかったのです。しかし、そうしなかった。
この夢は、彼が現在抱えている問題に対して作られたわけではなく、解決した後に待っていることを回避するために作られています。
つまり、最初の問題が解決する前提でストーリーが構成されている。ゆえに、問題解決の暗示と読めるのです。
異物に対する ” 印象 “
体外に異物が排出されるといった夢は、排出されたものが何であるのか、また、その異物のサイズ、色や質感などによって、より緻密な解釈をしていくことになります。
異物が大きければ、それだけ大きな問題を表し、気味の悪い感触ならば、その ” 気味の悪さ ” は、心の中で感じている嫌悪感や不快感を表す。
触るにも抵抗があるようなものならば、これまで蓋をしてきた触れたくなかった問題を表している・・と読むことも出来る。
ただ、夢は、常に、それを見ている本人の主観的なイメージによって描かれる、ということを理解しておく必要があります。
もし、小さなことでも気になってしまう人なら、実際はそれほど大きな問題ではないのに、夢の中では巨大な異物として登場することがあります。
鏡の前で、新しく見つけた頬の吹き出物が、その人にとって最悪の出来事に感じられるのであれば、潜在意識はそれを大掛かりな演出として表現する。
ドングリを口の中に入れたリスのように、頬が大きく膨れ上がっているというような。
これは異物の大きさだけに限らず、全ての夢において言えることです。
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ここで、もう一つ夢を紹介しましょう。次は、とある女性が見た夢の一例。
刺抜きで手のひらに刺さった棘を抜いている。
抜き終わっても痛みがあるので、傷跡をつまんでみるとまだ残っている。
手の平に刺さった棘を抜いているという短い夢です。
「棘の材質は分かりますか?」
筆者の質問に、彼女は ” 鉄の破片のようなイメージ ” と答えます。
そして、それを抜いた時、凄く嫌な気分だった。体の中に、鋭く尖った異物が入っていることが怖いと感じた。
筆者は、” 棘 ” が、時折、心の中で引っかかっている事柄を表わすのを知っていたので、次のように質問しました。
「最近、心に引っかかていることに、何か心当たりは?」
彼女いわく、つい先日、子供と喧嘩をしてしまい、カッとなって手を上げてしまったと言います。
「軽くですが、頬にビンタをしてしまいまして・・今まで子供に手を上げたことは、一度も無かったので」
「お子さんは、お幾つですか?」
「中学1年です。最近、反抗期に差し掛かっているようで」
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この夢における ” 棘 ” は、彼女の中の ” 衝動的な怒り ” を一つのイメージとして物質化しています。
その異物は、鋭く尖っていて、冷たい鉄の破片のような物体として描かれている。
彼女は、その破片を見て怖くなるのです。自分の中に、誰かを傷つけるかもしれない危険なものが潜んでいることに。
そして、それを棘として抜き取ることで排除しようとしているが、完全に取り去ることが出来ない。
夢の作り手である彼女は、その棘が、本当は何を意味するのかを知っているのです。
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異物の形状や質感だけではなく、その異物に感じた ” 感覚 ” も観察対象です。
この夢では、棘を抜く時に、彼女は不快な気分になった。
つまり、子供に手を上げてしまったことに対する罪悪感なのですが、夢を見ている最中は、事実の直接表現を避けているため、それは、彼女にとって ” 言い知れぬ不快感 ” でしかないわけです。
夢の中でこうした ” よく分からない不快感 ” は、時々、見られる現象です。そして、目覚めてから、冷静に夢を思い返したが、それほど不快になるような場面とは思えない。
” あの、嫌な気分は、一体、何だったんだろう? ”
その場面が、目を背けておきたい事実を隠蔽するために、作られたシチエーションだからです。
夢を読み解くために必要なこと
さて、今回は、体から異物が出る夢について解説しましたが、体にまつわる夢というのは、様々なシチュエーションが考えられます。そして、全てのシチュエーションを解説するわけにもいきません。
あなたの見た夢は、きっと複雑なストーリーで、簡単には読み解くことが出来ないのでしょう。
仮に、あなたが、他の誰かと全く同じ設定の夢を見たとしても、与えられた答えが、あなたの求める答えとは限らない。むしろ、誰かにとっては正解であっても、あなたにとっては不正解かもしれません。
では、どうすれば、正しい答えを得られるのか?
その夢が生まれた最初の地点に戻る以外に方法は無いのです。そして、最初の地点とは、あなたの ” 心 ” です。
*
” 心 ” と言われても、漠然としていて、何から始めるべきなのか分からないかもしれません。
それをこの記事で全て解説することはできませんが、一言で言うなら ” 自己観察 ” です。
日記をつける習慣のある人なら、文章を書きながら、自分自身について振り返り、省察するということに慣れているでしょう。
しかし、忙しい日常を送っている現代人は、わざわざ時間を取って自身を振り返るという、後ろ向きな活動をしないものです。夢を読み解くためには、それが必要になります。
時間を惜しんで生きている人には、あまり向かない作業かもしれませんが。
今回、いくつかの夢を紹介しましたが、この記事以外でも身体にまつわる夢について解説しています。
参考になるか分かりませんが、夢占いで調べても意味不明という場合は、少し違った視点で読み解いていく必要があるかもしれません。
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