長編物語の夢|壮大な体験をした感覚と心理 (3)

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では、物語の終盤、駐車場の場面について考えていきましょう。

最後に駐車場で彼女は、電話をかけてきた友人Aと再会する。友人Aは涙を流しながら彼女に ” 本当のこと ” を話す。

この場面における友人Aは、どういった位置づけでしょう?

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ラストシーン

まず、冒頭では ” 試練を課せられる人 ” という象徴的存在として友人Aが登場しています。

そして、当初、傍観者であった彼女に電話をかけてきた。

駐車場の場面では、彼女に情報をリークした組織の裏切り者という立場で登場しています。

会議室の場面を思い出してみましょう。

そこには、三人の役員がおり、その内の一人が話合いに納得していない様子だった。つまり、組織内部にも問題意識を持っている者がいた。

問題から目を背け続けることに違和感を感じ始めていた彼女の心の叫びが、まだ、それを明確に認識していなかった彼女に電話をかけたのです。

この場面における友人Aは ” 最初に問題意識を持ったもう一人の自分 ” です。

また、犯罪組織は彼女自身から生まれたものですから、言わば、逃亡していた彼女自身も組織内部の人間なのです。

友人Aは泣きながら彼女に謝る。

” こんな事になってごめん。私が電話したせいで ”

本当は、こんな事で悩みたくないが、どうしても伝えなければならなかった。このまま無視し続けることは出来ないと気づいてもらう必要があった。

それが、心をかき乱す結果になったとしても。

セッションの終わりに、彼女は言いました。

「Aにそう言われて、私も泣いてしまったんです。それで、もういいから、全部、分かってたからと・・」

夢を作ったのは彼女自身なので本当は、心の中で何が起こっていたのか、全て知っているのです。それが言語化されていなかっただけで。

ただ、筆者には一つの疑問が残りました。

この夢が、職場で感じているジェネレーションギャップの問題を描いているとして、それが、それほどまでに彼女の心を追い詰めていたのだろうかと。

この疑問を話すと、彼女は言います。

「多分、Aの妊娠のこともあって、自分の人生について振り返ってしまったのだと思います」

「人生・・ですか」

「ええ、私の場合、仕事でキャリアを築くか、結婚して家庭を持つかという選択じゃなくて・・職場にも居場所が無くて、家庭を持つことも出来ないので・・」

筆者は、思った以上に彼女の抱えているものは深刻だと気づかされました。この夢は、彼女の人生のテーマを描いていたのかもしれません。

最後に電話の場面に戻り、ストーリーの幕は閉じられます。

潜在意識は、いくつかの場面を必要に応じて追加しながらも、最後に最も伝えるべきことをストレートに描いている。

結局、それは、心の奥底で苦しんでいたもう一人の自分から送られてきたメッセージを受け止めるというシンプルな物語なのです。

電話で交わされた友人との会話。それが、この夢が伝えていることの全てです。

物語を体験した感覚

長いストーリーの夢は、様々な場面によって構成されます。その一つ一つに意味がある。

夢を見ている本人は、眠っている間、ずっとベッド上にいるわけですが、心は常に変化し続けています。

今回の夢では、彼女の心の変化が場面ごとに克明に描写されていました。まさに、人の心は眠っている間も成長していくのです。

では、長い夢から目覚めた時に壮大な物語を体験したような不思議な感覚。

あの感覚は、どこから来るのでしょう?

それは、夢の中で精神的な紆余曲折を経て、何かを悟ったり、探していた答えを見つけたり、という ” 心の旅 ” を描いているからです。

眠り始めた時から、その心境が大きく変化したとしたら、その大きさは夢の中で距離や時間に置き換えられる。

彼女の見た長い夢は、結局、すでに内心では分かっていたことを描いているだけのようにも見えます。

ただ、それを何となく知っていたのか、または、しっかりと受け止めたのか、本人にとっては大きな違いだった。

あまり変化が無いように見えて、実は、とても意味のあること、それを見落とすべきではありません。

たった1㎜の変化。それは、その人にとって本当に1㎜なのでしょうか?

さて、あなたが長い物語の夢を見たとして、どのように解釈していけばよいのでしょう?

会議室の場面について、彼女は自ら解釈を導き出した。それが、夢を読み解くヒントとなった。

ストーリーの中で、何となく読み解けそうな場面があれば、そこを掘り下げていくという方法は、あながち間違いではありません。

自分を取り巻く日常や現実の出来事と夢の内容に ” もしかして・・ ” と思わせる関連性を見つけることがあるかもしれない。

もし、それを見つけたら、時間をかけて質問を繰り返していくのです。

なぜ、この人は登場しているのか?

なぜ、この場所なのか?

なぜ、リアルではなく、架空の設定を選択したのか?

なぜ、このタイミングで夢を見たのか?

なぜ、・・・

そのうちに映像としてのストーリーの中に、別のストーリーが浮かび上がってくる。

それが、” 心の物語 ” です。

 

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