では、物語の終盤、駐車場の場面について
考えていきましょう。
最後に駐車場で彼女は、電話をかけてきた
友人Aと再会する。友人Aは涙を流し、
彼女に ” 本当のこと ” を話す。
この場面における友人Aは、どういった
位置づけでしょう?
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ラストシーン
まず、冒頭では ” 試練を課せられる人 ”
という象徴的存在として友人Aが登場
しています。
そして、当初、傍観者であった彼女に
電話をかけてきた。
駐車場の場面では、彼女に情報をリーク
した組織の裏切り者という立場で登場
しています。
会議室の場面を思い出してみましょう。
そこには、三人の役員がおり、その内の
一人が話合いに納得していない様子だった。
つまり、組織内部にも問題意識を持って
いる者がいた。
問題から目を背け続けることに違和感を
感じ始めていた彼女の心の叫びが、まだ、
それを明確に認識していなかった彼女に
電話をかけたのです。
この場面における友人Aは、
” 最初に問題意識を持ったもう一人の自分 ”
です。
また、犯罪組織は彼女自身から生まれた
ものですから、言わば、逃亡していた
彼女自身も組織内部の人間なのです。
そして、友人Aは泣きながら彼女に謝る。
” こんなことになってごめん。
私があなたに電話したせいで ”
本当は、こんなことで悩みたくないが、
どうしても伝えなければならなかった。
このまま無視し続けることは出来ないと
気づいてもらう必要があった。
それが、心をかき乱す結果になった
としても。
*
セッションの終わりに、彼女は次のように
言いました。
” Aにそう言われて、私も泣いてしまった
んです。それで、もういいから、全部、
分かってたからと・・ ”
夢を作ったのは彼女自身なので本当は、
心の中で何が起こっていたのか、全て
知っているのです。それが言語化されて
いなかっただけで。
ただ、筆者には一つの疑問が残りました。
この夢が、職場で感じている
ジェネレーションギャップの問題を描いて
いるとして、それが、それほどまでに
彼女の心を追い詰めていたのだろうかと。
彼女にこの疑問を話すと、
次のように答えます。
” 多分、Aの妊娠のこともあって自分の
人生について振り返ってしまったのだと
思います。私の場合、仕事でキャリアを
築くか、結婚して家庭を持つかという
選択を迫られているわけではなく、
職場にも居場所が無く、家庭を持つ
ことも出来ないという状況なので・・ ”
筆者は、話を聞き、思った以上に彼女の
抱えているものは深刻だと気づかされました。
この夢は、彼女の人生のテーマを描いて
いたのかもしれません。
*
最後に電話の場面に戻り、ストーリーの
幕は閉じられます。
潜在意識は、いくつかの場面を必要に
応じて追加しながらも、最後に最も
伝えるべきことをストレートに描いている。
結局、それは、心の奥底で苦しんでいた
もう一人の自分から送られてきたメッセージ
を受け止めるというシンプルな物語なのです。
電話で交わされた友人との会話。それが、
この夢が伝えていることの全てです。
物語を体験した感覚
長いストーリーの夢は、様々な場面に
よって構成されます。その一つ一つに
意味がある。
夢を見ている本人は、眠っている間、
ずっとベッド上にいるわけですが、
心は常に変化し続けています。
今回の夢では、彼女の心の変化が場面
ごとに克明に描写されていました。
まさに、人の心は眠っている間も成長
していくのです。
*
では、長い夢から目覚めた時に壮大な
物語を体験したようなような不思議な感覚。
あの感覚は、どこから来るのでしょう?
それは、夢の中で精神的な紆余曲折を経て、
何かを悟ったり、探していた答えを
見つけたり、という ” 心の旅 ” を描いて
いるからです。
眠り始めた時から、その心境が大きく変化
したとしたら、その大きさは夢の中で
距離や時間に置き換えられる。
彼女の見た長い夢は、結局、すでに内心
では分かっていたことを描いているだけ
のようにも見えます。
ただ、それを何となく知っていたのか、
または、しっかりと受け止めたのか、
本人にとっては大きな違いだった。
あまり変化が無いように見えて、実は、
とても意味のあること、それを見落とす
べきではありません。
たった1㎜の変化。それは、
その人にとって本当に1㎜なのか?
*
さて、あなたが長い物語の夢を見たとして、
どのように解釈していけばよいのでしょう?
会議室の場面について、彼女は自ら解釈を
導き出しました。それが、夢を読み解く
ヒントとなった。
ストーリーの中で、何となく読み解けそうな
場面があれば、そこを掘り下げていくという
方法は、あながち間違いではありません。
自分を取り巻く日常や現実の出来事と
夢の内容に ” もしかして・・ ” と思わせる
関連性を見つけることがあるかもしれない。
もし、それを見つけたら、時間をかけて
質問を繰り返していくのです。
なぜ、この人は登場しているのか?
なぜ、この場所なのか?
なぜ、リアルではなく、架空の設定を
選択したのか?
なぜ、このタイミングで夢を見たのか?
なぜ、・・・
そのうちに映像としてのストーリーの中に、
別のストーリーが浮かび上がってくる。
それが、” 心の物語 ” です。
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