充実感が無い時期に知っておきたいこと

” 毎日に充実感が無くて窒息しそうです ”

” あの頃みたいに充実した毎日を
取り戻したいんです ”

よく、そういった若者の声を聞くことが
あります。

充実感とは、すべきことが明確で、
行動さえすれば、それが成果に繋がるという
迷いの無い状況で生まれる。

なので、充実感のある毎日を送っている
としたら、それは、単に進む方向が
決まっており、何も考える必要がない状態、
つまり、クリエイティブとは言えない毎日を
送っているということです。

一見すると、クリエイティブであるほど
充実感を得られるようにも思えますが、
実は、そうではない。

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充実感とクリエイティブな状態

例えば、画家が新たな作品を生み出す。

最もクリエイティブなのは絵を描いている時
ではなく、何を描くかを考えている時です。

絵を描くというのは、頭の中に浮かんだ
インスピレーションを経験で培った技術で
キャンバスに描くという単なる ” 労働 ” です。

白いキャンバスに鮮やかな色彩を載せていく
という絵を描いている姿が作品が
生み出される瞬間を捉えているようで
クリエイティブに見えるというだけで、
画家はすでに頭の中で完成した作品を
コピー&ペーストしているに過ぎない。

自分のアイデアが白いキャンバスの上で
形になっていく過程は、純粋に楽しく、
ワクワクするでしょう。

その楽しさが ” 充実感 ” です。

クリエイティブである状態は、
実際、それほど楽しいものではない。

ブログや小説を書いた経験がある人なら
分かると思いますが、何について書こうか
考えている時は単純に疲れます。

まるで、1メートル先も見通せない
深い霧の中を歩いているようで、
あれでもないこれでもないと言って、
頭の中でシュミレーションをして、
進むべき方向を手探りで探すわけです。

そして、一筋の光が見えると、これまで
停滞していた作業がせきを切ったかように
捗り、次から次へと文章が浮かんでくる。
後は、それをキーボードで叩き込むだけ。

インスピレーションが降りてくるまでは
苦しいが、それが明確になり、
何をすべきかが分かった時、” 充実感 ” は
やってくる。

これは、プロセスなのです。

進むべき方向を定めるフェーズがあり、
それが定まった後、実際に行動して形作る
フェーズへと移っていく。

この一連のプロセスの中で
” 充実感 ” を得る。

それを得るには、まず、方向を定める
というフェーズが必要であり、これは、
クリエイティブな作業でエネルギーを
消費し、とても疲れる。

充実感とは、その後についてくる
” おまけ ” のようなものです。

なので、充実感だけを求める人は、本当の
意味でクリエイティブな作業を避けようと
する心理が働く。

なぜなら、楽しくない作業は充実感とは
程遠いからです。

よって、苦しみ抜いて進むべき道を探す
という必要なプロセスが省略され、
充実感を得られない状態へと陥っていく。

これは、単に充実感を得るためには
苦しまなければいけない。苦しむほど、
壁を打ち破った時の感動が大きいから
という感情的な話をしているわけでは
ありません。

壁を打ち破ることが将来的に意義のある
行為でなければ、その後に充実感は
得られない。

仮に、それが薄い壁であり、大して
苦しまずに破れたとしても、その仕事に
大きな意義があれば充実感はあるでしょう。

例えば、誰かに親切にした。

席を譲ってあけたとか、道を教えてあげた
とか、それだけで一日が良い日に思える。

しかし、誰からも感謝されない仕事なら、
それをやり終えたところで、単に疲れた
と思うだけです。

いずれにせよ、インスピレーションを
得るまでの試行錯誤のフェーズから、
アイデアを形にするフェーズへと移行する
一連のプロセスがあり、” 充実感 ” は
フェーズが移行する時ようやく生まれる
ということです。

インスピレーションが無ければ
何かを作るという工程は始まりませんから、
必然的に二つのフェーズはセットとして
一つのプロセスで実行される。

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” 飽き ” の本質

全体のプロセスは、こんな感じでしょう。

図1:

まず、創造フェーズ。

これは、インスピレーションを得るまで
試行錯誤し、苦悩する時期です。
このフェーズでアイデアが生まれる。

そして、創作フェーズ。

生まれたアイデアを形にすべく行動する
時期です。この時期に充実感、
言い換えればモチベーションが高まる。

仮に画家の例で言えば、キャンバスの絵が
描きあがるまでは充実感は持続する
でしょう。ただし、作品が完成すれば
それは消える。

現実的に考えれば、充実感を永久に
持ち続けることは不可能なのです。必ず
そのフェーズは終わり、新たに試行錯誤して
道を模索するフェーズへと戻る。

” 充実感が得られなくなった ”
” モチベーションが徐々に下がっていく ”

それは、絵を描き続けることに ” 飽きた ”
からではなく、作品が完成したからです。
もしくは、完成に近づきつつあることを
悟ったからです。

アイデアが形として出来上がっていく過程で
すべき仕事の幅が狭くなっていく。

以前のように全速力で突っ走れるだけの
道のりは残っていないので、歩幅は必然的に
小さくなっていきます。

推進力を失ったことで、仕事に遣り甲斐を
感じられなくなっていく。

因みに ” 飽き ” とは、既に完成している
にも関わらず、その場所に踏みとどまって
いる状態です。

充実感が得られるのは、創作フェーズのみ
であって、実際に手を動かして作品を形に
しているときだけです。

そして、そのフェーズでは、実際は
何も生み出してはいない。

上図はプロセスを単純化していますが、
このプロセスを1単位だとすれば、実際は
とても小さな単位で何度も繰り返されたり
します。

こんな感じでしょうか。

図2:

インスピレーションが浮かんで、実際に
作り始めてみると、上手く行かずに
再び模索が始まるという試行錯誤が
繰り返されていく。

プロセスの1単位が小さいと、フェーズ2の
幅が狭く、必然的にモチベーションの曲線は
小さなものになります。

なので、試行錯誤中はモチベーションが
なかなか上がらないという状態になる。

与えられたインスピレーションが全ての
問題を解決できるほどのインパクトが
あれば、細かく刻む必要が無いので
フェーズ2の幅は大きくなる。

それに応じてモチベーションの曲線は
大きくなり、より充実した創作活動が
行えるわけです。

また、インスピレーションによって
得られたアイデアは、その度にテスト
されるわけですが、テストの結果を得る
までに大掛かりな作業が必要な場合も、
はやり、フェーズ2の幅は広くなり、
モチベーション曲線は比例して大きくなる。

つまり、作品が完成するまで長い時間を
要するという場合は、その間に行く手を
塞ぐ障害が無い限り、何も考えず筆を
動かしていればよいので創作活動を楽しむ
時間がその分長くなるということです。

もちろん、体力的な限界や集中力の限界は
ありますから、はやり、モチベーションを
下げないために休息を取るといった
マネジメントは必要だと思います。

創造と創作

この一連のプロセスの中で最も苦痛なのが、
アイデアをひねり出すまでのフェーズ1の
時期です。

それは、まさしく苦痛なので、
モチベーションは低下する。

なので、モチベーションを上げることで
アイデアを効率的に生産できるという
考え方は、あまり意味が無いと考えています。

モチベーションの上昇は方向が定まった時、
すなわち、すでにアイデアが生まれた後に
上昇するので、その時点でアイデアを生産
するタイミングは終わっている。

ただ、アイデアを形にするフェーズ2で
モチベーションの維持を図ることには
意味があると思います。

単純に作業効率が上がるでしょう。例えば、
音楽を聴きながら作業を行うと集中力が
持続するといった。

また、受験生が勉強をするときに
モチベーションが必要だというのは
そのとおりだと思います。

勉強は知識の習得が目的なので、記憶する
ための ” 労働 ” です。

どの大学に進学するかということは
その時点で決まっているわけですから
後は合格に向けて、ただひたすら記憶、
知識の確認の繰り返しです。

勉強は得意だが、実践に弱いという人が
います。

これはフェーズ2でモチベーションを
コントロールするスキルが高いが、
フェーズ1のモチベーションの低い状態で
アイデアをひねり出すという
クリエイティブに関するスキルが
不足しているということだと思います。

いずれにせよ、” 充実感 ” を永久に維持
することは不可能であり、それは創作物が
生み出されるプロセスの中で起こる
一過性の現象に過ぎない。

” 充実感 ” は心地よく、人々が求める幸せの
一つの形だとしても、それだけに固執する
べきではないと筆者は考えます。

むしろ、充実感を得られない創造フェーズ
こそが深い霧を抜け出すための一筋の光
であり、現状を打破するきっかけを与える
のです。

もし、充実感が得られずに、
自分がどこに向かっているのか分からない
といった場合は、自分がどのフェーズに
いるのかを意識するとよいかもしれません。

それが創造フェーズならば、その苦しみは
必要なものであり、充実感が無いという
状態は当然なのです。

創造フェーズで必要なのは、
モチベーションではなく、忍耐力です。

這いつくばって泥を舐めながら、それでも
進むスタミナであり、暗闇の中で一歩を
踏み出せる勇気です。

予め目的が定まっている創作フェーズに
長い間留まっていると創造する力を
失ってしまう。

創造することは、つまらない。

しかし、それが、あなたを救い出す
” 鍵 ” になるのです。

 

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