もし、あなたの将来に何か悪い出来事が起こるとしたら、それを回避したいと思うのは当然でしょう。
例えば、明日、仕事でミスをして上司に怒られる未来が待っているとします。
夢によってそれを事前に知ることが出来るなら、予めミスをしないように気をつけることも出来る。
” 明日、あなたはミスをするだろう ” と夢の中でシンプルな予言さえあれば済む話です。何だったら、未来をそのまま見せてくれてもいい。
しかし、潜在意識は分かりやすい形で警告をしてくれません。謎めいた夢を見せるだけです。
なぜでしょう?
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メッセージは送らない
筆者は、時々、” 潜在意識からのメッセージ ” という表現を使うことがあります。これは、便宜上、その方が伝わりやすいと思って使うお決まりのフレーズです。
この表現は、実は、誤りです。
厳密に言うと、潜在意識があなたにメッセージを送ってくることはありません。
自分にメッセージを送るなんて変でしょ? そもそも、潜在意識はあなた自身なのだから。
未来の出来事を暗示する夢は確かにありますが、それは警告メッセージを発して、あなたに注意を促しているわけではないのです。
では、なぜ、潜在意識は私たちに夢を見せるのでしょう?
” 見せる ” という表現も筆者はよく使いますが、これも便宜上のものです。
厳密には、潜在意識は夢の中で私たちよりも一足先に危機に直面しているのです。そして、夢の中でそれを自ら回避している。
潜在意識が直面した危機を回避している姿を客観的に ” 夢 ” という形で私たちは見ているわけです。つまり、鑑賞してもらうために作ってない。
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この状態を分かりやすく例えてみましょう。
家で飼っている番犬が深夜に吠え続けている。番犬は家の敷地内に侵入した泥棒に吠えかかっているのです。
でも、それは、飼い主に ” 泥棒が入ってきたよ! ” と知らせるために吠えているわけではなく、単純に怪しい人影を動物的本能から威嚇しているに過ぎない。
でなければ、泥棒に吠え続けるよりも、部屋で寝ている飼い主に向かって吠えるでしょうから。
飼い主は、必死に危機に対処している犬の鳴き声を聞いて泥棒に気づくわけです。
犬からすれば知らせているつもりはないが、結果的に危機を知らせる警告アラームになっている。
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未来の出来事を暗示する夢も同じです。
私たちにとっては ” 暗示 ” ですが、潜在意識にとっては、今対処すべき ” 目の前にある危機 ” です。
それが未来の出来事であったとしても、それを感じ取ってしまった以上、潜在意識にとってそれは ” 今起こっていること ” です。
なぜなら、潜在意識はあなたの心の中に存在し、現実世界は、あなたを通してでなければ認識することが出来ない。
頭に思い浮かべた海のイメージと、実際に視覚として捉えた海のイメージは、潜在意識にとっては同じです。
あなたは車を海に向かって走らせている。あと数分で海が見えてくるでしょう。あなたは、その光景を頭に思い浮かべる。
その時点で、潜在意識はすでに海に到着しているのです。
もし、あなたが、不意に何かしらのインスピレーションによって、未来を感じ取ったとしましょう。潜在意識にとっては、それは未来ではありません。
” 突然、出現した現在 ” です。
水溜まりのよけ方
もし、あなたのインスピレーションのアンテナに未来の出来事が引っかかったとしたら、それは潜在意識にとって ” 今、起こっていること ” です。
それが、悪い出来事ならば、ただちに対処しなければならない。潜在意識は夢を作り、それを疑似的に回避しようとする。
ただ、潜在意識の危機回避の仕方は、現実世界の私たちとは根本的に違っています。
例えば、歩いている先に大きな水溜まりがあれば、普通なら、はまらないように回り道をしますよね。
潜在意識の場合は跨げるほどのサイズに水溜まりを小さく調整してから、そのまま直進するのです。
水溜まりのサイズを調整する? どうやって?
夢の世界は潜在意識が作り上げたものですから、どのようにでも都合良く作り変えることが出来る。
何だったら、水溜まりを凍らせることも出来ますし、近くまでいくと、それは水溜まりではなく、アスファルトが濡れているだけだったという設定にすることも出来る。
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私たちは、危機を物理的な方法で回避しなければなりませんが、潜在意識はシチュエーションを変更することで回避します。
つまり、潜在意識は感じ取った未来の出来事を直接表現しない。危機回避のために都合の良い形に書き換えて夢として描く。
言わば、夢は出来事そのものを描くわけではなく、出来事に対する潜在意識の ” リアクション ” が描かれてる。
結果、実際の出来事から乖離した支離滅裂にも思える奇妙なストーリーになる。
潜在意識がドタバタしている
つまり、夢がメッセージとして、極めて分かりにくい形になっているのは、そもそも潜在意識がメッセージとして作っているわけではないからです。
” 今ここにある危機 ” に対処するために夢を作っている。
潜在意識が夢の中で、現在進行形の危機にどうにかして対処しようとドタバタしているのを、夢という形で私たちは目撃するのです。
つまり、私たちは夢という潜在意識の ” リアクション ” を観察して、何に対処しようとしているのかを推測しなければならない。
それが未来の出来事の場合もあれば、現在、あなたが抱えている悩みや願望の場合もある。
夢は、主観によって描かれるのです。
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例えば、とある男性が車が故障する夢を見たとしましょう。
無論、この夢は車のトラブルを予知しているわけではありません。夢の中のトラブルは出来事に対するリアクションです。
なので、ここで問いかけるとすれば、 ” 車の故障の原因は何か? ” でも、” いつ故障するか?” でもなく、” なぜ、車を故障させる必要があったのか? ” です。
つまり、潜在意識は車が故障して、家を出ることが出来ないという状況を作りたいわけです。
夢を見た数日後、彼は友人に飲みに行こうと誘われる。しかし、友人は彼が飲めないと知っていて誘っているのです。要するに車で送ってもらうために。
潜在意識は誘いを断る口実を作るために、夢の中で車を故障させたのです。
もし、以前も、友人に誘われて車を出したことがあり、彼が夢の意味を理解できるならば、車の夢を見た時点で、ある程度、何が起こるか推測することが出来るかもしれません。
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夢は、一見すると、実際に起こる出来事と全く無関係に見えます。しかしそれは、事実そのものを描かないという夢の性質によるものです。
巷では、予知夢をオカルトの一種として扱うことがありますが、それは、大抵、” 夢で見た状況と同じ出来事が起こる ” といった単純な解釈がされる。
例えば、地震の夢を見て、地震の予知だと解釈する。
しかし、よく考えてみると奇妙です。自分が建物の下敷きになる夢をただ漠然と描くことに、何のメリットがあるのでしょう?
なぜ、わざわざ自らを危機的状況に陥れる夢を作る必要があるのでしょう?
それは、必要だから作られる。
逆に、必要なければ作られないはずです。要するに、地震を再現することで、何かしら達成できる別の ” 目的 ” があるのです。
例えば、希薄だった家族の絆を取り戻したければ、夢の中で災害を起こすでしょう。SNSで預言者として注目を集めたければ ” 張りぼて ” の災害を演出するでしょう。
それは ” 災害 ” を描いているわけじゃない。願望を描いた結果が ” 災害 ” という形になっただけです。
夢は、それほど単純ではありません。そして、その事実を知っているのは、今のあなたを含めて、ごく僅かです。
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