夢の中で、見知らぬ家に住んでいるという
場合があります。
あたかも最初から住んでいるかのように
何の疑問も持たず、そこで普通に生活
している自分。
どことなく以前住んでいた家や田舎の
実家を思わせるような懐かしい雰囲気を
持つ家や、自分の経済力では、到底
住むことが出来ない立派な豪邸など、
夢から目覚めて、こう思う。
” あれは、一体どこなんだ? ”
さて、こうした夢の中の住み慣れた
” 見知らぬ家 ” は、どう解釈すれば
よいのでしょう?
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見知らぬ ” 高級住宅 “
次は、とある女性が見た夢の一例です。
眺めのいいガラス張りのリビング。
すぐ目の前に砂浜と海が広がっている。
リビングから海岸に出ると、
人の集団が泥を投げ合って
遊んでいるのが遠くに見える。
一人がこちらに気づき、
なぜか分からないが手に持っていた
泥を投げてくる。
続けて、一人二人とこちらに
気づき始め、一斉に泥を投げてくる。
家に避難するが集団は家を取り囲み
ガラスを割って入ってこようとしている。
女性は夢の中で海岸線に建てられた
美しい高級住宅に住んでいたと言います。
彼女自身は、現在、普通のアパートに
住んでおり、そのような家に住んだ経験は
ありません。
しかし、夢の中では、その高級住宅は
” 新築したばかりの自分の家 ” という
認識だった。
一体、彼女は、なぜ、
このような夢を見たのでしょう?
*
一見すると、この夢は現実の彼女の
日常には全く無関係な世界を描いている
ようにも見えます。よくある現実逃避型
の夢だと。
しかし、セッションを進めていくうちに、
夢が、現在、彼女の抱えている問題と密接に
関連していることが分かってきたのです。
人生の分かれ道
彼女には同じ大学を卒業し、一緒に就活を
してきた友人がいました。
そして、つい半年ほど前に二人とも
同じ会社に就職出来た。
彼女と友人は専攻が違っていたので、
就職してから別々の部署に配属されました。
しばらく月日が経って仕事に慣れてくると、
会社の中の状態が何となく見えてきた
と言います。
それは、やりたかった仕事に就くことが
出来た順風満帆な自分に比べて、友人は
希望していた職種ではなく、とても厳しい
部署に配属され、辛い思いをしている
という立場の違いでした。
” 自分のいる場所は恵まれている方なんだ ”
彼女にそう思わせたのです。
*
この事情を聞くと、今回の夢の意味が
見えてきます。
筆者は、次のように尋ねました。
” 集団の中に、ご友人はいましたか? ”
最初、夢の内容について尋ねたときは、
彼女は友人のことは一言も言わなかった
のです。
” ・・実は、最初に
泥を投げてきたのが友人でした ”
彼女は鍵となる重要な設定を伏せていた。
*
この夢は彼女の ” 後ろめたさ ” が描かれて
いるのです。
彼女の会社での今の立場が ” 高級住宅 ”
として表されている。
そして、砂浜で泥を投げ合っている
遠くの人々は、友人のように、毎日、
苦しい思いをしながら、日々の仕事を
こなしている現場の人たち。
潜在意識は、それから目を逸らすために、
あくまで ” 泥を投げ合って遊んでいるだけ ”
という設定に仕上げています。
そして、その人々が彼女を見つけて、
泥を投げつけ、最終的には暴徒となって
ガラスを割って家に入ろうしてくる。
彼女の ” 後ろめたさ ” が自身を責めている
場面です。
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自ら導く ” 答え “
この解釈を話したところ、最後の部分が、
少し違っているように思うと彼女は言います。
彼女の解釈は次のようなものでした。
会社は、度々、人事異動を行うために
自分も今の場所にいつまでいられるか
分からないと言うのです。
” 自分は、それを恐れているのかも。
後ろめたさもあるが、現場には
行きたくないという自己保身の気持ち
もあるのではないか?”
筆者はその解釈を聞き、自分の中の ” 弱さ ”
を認める彼女の冷静な洞察力に感心します。
確かに夢の中で彼女は、家の中に避難し、
自分の身を守ろうとしている。
*
なぜ、外の世界に解放された空間ではなく、
リビングをガラスで囲ったのか?
彼女は自分のいる世界と外の世界に
” 仕切り ” が欲しかったのかもしれません。
その一方、ガラスという透明な壁を
選んだのは、家の中と外は同じ一つの世界
で続いているという事実を受け止めよう
ともしている。
夢の中に再現された架空の家は、
彼女の後ろめたさや現在の自分の立場、
将来に対する不安を表現するために
最適の建築物だった。
” 新築したばかりの自分の家 ” という
夢の中で彼女が持った奇妙な認識は、
就職して間もない時期であり、今は定着
しつつある彼女の仕事上の立場が
” 新築の家 ” という形で表現されているのです。
” 答え ” に最も近い人物
例えば、あなたが見知らぬ家に住んでいる夢
を見たとします。
見知らぬはずなのに、ずっと前から
住んでいるという感覚があるなら、それは、
” 家 ” という形を借りた別のものなのかも
しれません。
今回、紹介した夢では ” 会社での立場 ” が
家として登場しています。
他にも、守り続けてきた信念や、
昔からの友達との関係、日常の習慣や
理想など、目て捉えることが出来ない
無形の事柄を ” 家 ” という形にしている
可能性もあります。
無形のものに ” 家 ” という形状を与える
ことで、より直感的に感情のわだかまりを
処理することが出来る。
例えば、心の浄化が必要だと日頃から
感じている人なら、汚れた部屋を掃除
している夢を作るかもしれません。
実際、心を浄化するためには、どうしたら
よいのか分かりませんが、部屋を掃除する
だけならば容易に解決できる。
*
もし、夢の中の家が実在するものだった
場合は、また、別の解釈が必要になる
でしょう。例えば、その場所に関する
思い出を探る必要があるかもしれません。
他にも、実在する家ではあるが、
一部、違っている部分があるとか、
実在する二つの家が融合して架空の家に
なっているなど、” 家 ” と言っても
シチュエーションよっては判断が分かれる
ところです。
それを一つ一つ、解説することは不可能
なのです。仮に、ここで解説したとしても
あなたの夢には当てはまらないでしょう。
なぜなら、その夢は、あなたが自分自身
のためだけに作った唯一のものだからです。
既成の解釈に自分の夢を無理矢理、
はめ込もうとしないでください。
今回のセッションでは筆者の解釈を彼女が
修正し、自ら答えを見つけ出したのと
同じように、あなたも自身の解釈で見つけ
出してください。
その夢を最も理解している人物とは
それを作った人、つまり、あなたです。
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