夢から目覚め、それを思い返してみると、
設定が曖昧でよく分からない部分が
あったりします。
例えば、近くにいた人物が誰だったか、
よく思い出せないとか、
二人だったか三人だったか覚えていないとか、
前にも見覚えがあるような無いような・・
こういった ” 記憶違い ” のような状態。
これは、単なる記憶違いの場合もありますが、
必ずしも、そうとは限らず、あえて
” 曖昧 ” にしている可能性もあります。
誰だったのか思い出せないと言うなら、
それは ” 誰でもない ” という
意味なのかもしれません。
見覚えがあるようで無いというなら、
すでに知っていることを別の形に置き変えて
” 知らないこと ” にしようとしている
と解釈することも出来ます。
いずれにせよ、
それが単なる記憶違いなのか、
それとも意図的な演出としての ” 曖昧さ ”
なのかを考えてみる必要があります。
では、具体例を見ていきましょう。
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子犬の夢
次は、とある女性が見た夢の一例です。
小さな子犬が足元にすり寄り、
匂いを嗅いでいる。
子犬は大型犬種で、
大きくなったら自宅で飼うことができない。
困り果てた自分は
子犬を抱きかかえると、歩き回って
貰ってくれそうな人を探し回るが、
どこにも人がいない。
子犬は幼気な視線で
首を傾げて自分を見つめている。
この夢を見た彼女の話では、
子犬は捨てられていたわけではなく、
最初から足元にまとわりついていた。
表現としては奇妙ですが
強いて言うなら、
” 自分のペットでもなく、
野良犬でもなく、見知らぬ犬ではあるが、
以前からよく知っているという感覚 ”
と彼女は、その子犬の印象に
ついて説明しました。
無論、彼女は犬を飼っておらず、
夢に登場したのは、
架空の子犬だったそうです。
果たして、この曖昧な設定は、
何を意味しているのでしょう?
*
仮に、こう考えることも出来ます。
彼女は夢の一部を忘れたのだと。
確かに、夢のストーリーの一部を忘れることは
実際にありますから、その可能性は否めません。
ただ、もう一つの可能性として、
あえて、その部分を描写しなかった
と考えることも出来ます。
つまり、潜在意識が夢を作る過程で、
意図的にその部分を作らなかった。
では、その意図とは何でしょう?
曖昧な素性
それは、子犬を野良犬でも、
飼い犬でもない
” 曖昧な存在 ” にするために、
あえて、子犬の素性を描かなかった
ということです。
潜在意識は、なぜ、そのような
奇妙な設定を夢に取り入れたのか?
その問いに答える前に、
もう少し、この夢の背景について
探ってみる必要があります。
*
夢占いでは、” 犬 ” は、
人にとっては ” 良き友 ” という意味で、
” 援助者 ” を意味し、また、吠える犬は、
災いの警告とも言われています。
ただ、今回、彼女の話を聞く限り、
夢占いの解釈とは、関係が無さそうです。
筆者が、セッションを進めて行く中、
彼女が最近あった出来事について
話してくれました。
彼女は一カ月程前に、SNSを通じて、
地元にバトミントンサークルを作った。
SNSで連絡を取り合い、メンバーを募り、
コートを借りて休日にバトミントンをする。
最初は、知り合いの友達、
二、三人で集まるだけでしたが、
回数を重ねる度に、少しずつ
参加者が増えていく状況にありました。
*
サークルを始めたきっかけは、
友達との会話の中で、
彼女が何となく言い出したアイデアだったので、
彼女にサークルが ” 自分のもの ”
という認識はありませんでした。
それでも、彼女がいつの間にか
サークル運営の中心になってしまった。
彼女のアイデアによって生まれた
サークルではあるが、はっきり、
” 自分のもの ” とも言えない曖昧な状況。
始めたばかりの小さなサークルが、
夢の中で ” よく知っている子犬 ”
として登場しています。
潜在意識が子犬の素性を曖昧にした理由は、
彼女にとって、今のバトミントンサークルが
まさしく、それだからです。
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心の変化
” 子犬は大型犬種で
大きくなれば自分の家で飼うことが出来ない ”
つまり、このままサークルの規模が
大きくなっていくと、やがて、
その運営が彼女の負担になっていく事を
潜在意識はすでに見抜いているのです。
” 夢の中で子犬を抱きかかえ、歩き回る ”
” 自分のものではない ”
という認識を持つ反面、
運営者としての責任も感じており、
” ほっておくことが出来ない ”
という彼女の気持ちがうかがえる部分です。
*
貰ってくれる人を探し回るが
人がいないという部分。
夢の中に人が登場しないのは、
彼女自身がそれを望んでいないからです。
彼女は、ストーリーの主人公
であると同時に夢の作り手でもあるので、
あえて、子犬を渡さずに済む状況を作っている。
サークル運営の責任が重たいというなら、
それを誰かに渡してしまえばいい。
彼女は、なぜ、
渡したくないのでしょう?
*
子犬が首を傾げて、
彼女を見つめている最後の場面。
彼女にとって、
今の小さなバトミントサークルが、
世話が必要な子犬のような存在に
感じられたのかもしれません。
彼女は、サークルが大きくなっていく中で、
” 私が育てたもの ” という
愛着を持ち始めているのです。
この夢は、彼女の
微妙な心の変化を描写している。
” 曖昧さ ” というメッセージ
さて、今回は、夢の中の
” 曖昧さ ” について解説しました。
夢の中に ” 曖昧さ ” が意図的に
持ち込まれることは、よくあることです。
他の部分は、はっきり覚えているのに、
とある場面だけが記憶が混乱して
よく覚えていないという状態。
ストーリーや設定の辻褄が
合わないという状態。
例えば、来たこともない
場所に懐かしさを覚えたり、
一人の人物が、二つの場所に
同時に存在しているという設定だったり、
手に何か持っていたが、
それが何だったか思い出せないとか、
夜だったか、朝だったか思い出せないなど、
夢の世界では、現実世界では
説明のしようもない矛盾が
当然のごとく取り入れられます。
それは、眠っている脳が、
記憶違いを起こしているのではなく、
” 演出 ” であり、潜在意識が
私たちに送ったメッセージなのです。
*
なぜ、必要な場面を描かなかったのか?
なぜ、覚えていないのか?
なぜ、どちらでもないのか?
夢の中の曖昧な部分には、
夢を読み解く鍵が隠されています。
あなたの見た夢に
” 曖昧な部分 ” があるのなら、
潜在意識が、あえて曖昧にしている
その意図を考えてみてください。
関連記事 : 夢の中の ” 勘違い “|心当たりの無い記憶
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